ただ儚く君を想う 壱

桜樹璃音

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第2章 桜の導き

第16話

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「ふふ」


その可愛らしさに思わず、約束を破って笑ってしまった。

「あ、璃桜笑ったな?」

「笑ってない! 笑ってないよ、そうちゃん!!」

「嘘つけ! こら!」


こしょこしょと、脇の下を擽られる。


「きゃー、やめてぇ!」


笑いながら布団の上で、二人で転げまわっていれば、スパーンと物凄い音を立てて襖が開いた。


「そそそそ総司!!!! まだ夕餉もまだなのに、総司が部屋でいちゃついてるぅぅぅぅ?!!!!」


驚いてそちらを見れば、目のくりっとした可愛らしい少年が、私たちを真っ赤な顔で見下ろしていた。

布団の上で、総司の下に、入り込んでいる私。
そう言えばこの状況は、兄妹ってことを知らずに、普通に見たら、その、


……………健全ではない。


「平助。うるさいよ。なんでいつもそんなに元気いいの」


ふーっとめんどくさそうにため息を零し、私の上から退くそうちゃんの言葉に、この少年が誰なのかを知った。


「藤堂、平助?」

「え? 何で俺の名前知ってるの?」


きょとんと首を傾げる小柄な美少年。

サラリとした黒髪を後ろで束ね、睫毛の長い瞳をぱちくりと瞬く彼。
どうしてそんなにきれいな顔をしてるのだろうか、と劣等感に苛まれた。


ああ、新撰組って本当にイケメンが多いんだ。

というか、私も男の振りするんだったよな、なんてそんなことを考えて何故だか頬を染める藤堂さんをじっと見ていれば、


「大方、総司が話したんだろ」


突然、少年の後ろからにょきっと大柄な男の人が現れた。


「あ、新八さん」

「よう、総司。飯だぜ。男といちゃついてないで、早く来いよ」


こっちは、永倉新八さんか。

本当に史実通り。がたいが良くて、男気にあふれた感じ。
顔は、身体とは少しだけ趣向が異なり、優しげな眼差しが特徴だと思った。


現代だったら、ラグビー部の副キャプテン、って感じ。さりげなく周りの人たちを見守って、キャプテンのことを支えてそう。


「ってことは、この子、壬生浪士組に入るのか?」

永倉さんの後ろに、もう一人いた。

背が高くて、細マッチョ的なこれまたイケメン。
うっかり、サラリと流れる前髪から除くその色気を孕む眼差しを受けたら、目を回してしまいそう。


もうこれは、誰なのか聞かなくてもわかる。
だって、平成では新撰組の三馬鹿って、言われてるくらいだもの。


「原田、左之助さん?」

「おう、お嬢ちゃん、よろしくな!」


…………お嬢ちゃんって。
私、今男の子の恰好してるはずなんだけれど。


「原田さーん、その子は男の子だよー、目は見えてる?」


藤堂さんに、目の前でぶんぶんと手を振られている。
……でも、藤堂さん、顔真っ赤だよ、どうしたんだろう。



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