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第2章 桜の導き
第14話
しおりを挟む「璃桜、何か悩んでるでしょう?」
「え、そんなことないよ」
不審げにこちらを見やるそうちゃんに、空元気で無理に、ははは、と笑ってみせた。
瞬間、ぐに、と頬の肉を抓まれた。
ぐにぐにぐに、と揉まれる。地味に、痛い。
「……………しょーひゃん?」
「無理に笑わないの。璃桜が思ってることなんて、バレバレだよ。どうせ、なんで私だけ未来を知ってるの、とか思ってたんでしょう?」
「…………」
言い当てられて、撃沈した。
双子の兄の宗次郎には、私の気持ちはやっぱり何も隠せないようで。
そっと、白状した。
「……だって、嫌でしょう? 壬生浪士組の将来も、みんながどうなるかも、分るんだよ」
「え?」
まさかそこまで知っているとは思っていなかったようで、彼は驚いたように目を見張った。
「なんで、璃桜そんなことまで知ってるの?」
「……私、大学生だもの。今、歴史専攻で、幕末について研究したいと思ってたから」
いつ、どこで、誰が、何をする。
そんなの、大学受験の時にさえ必要な知識。
「そう、か、19歳って、大学生だった……」
「年号も、出来事も、頭に叩き込んだもの。それに、………皆がどうやって死んでしまうのかも、全部知ってる」
「……………」
とても、言いたくなかった、こんな事。
宗次郎に、嫌だ、と思われたくなくて、その表情を見ることができない。
一度下げた顔を、あげることができなかった。
また、鼻がつんとして、涙が盛り上がってくることに嫌気がさす。
涙を零さないように耐えて、じっと黙ったまま、布団の端っこに視線を固定していた。
少しでも、そうちゃんのことを覗うのが怖かったから。
「………璃桜」
どのくらい経ったのだろう、ぽつりと名を呼ばれた。
「……………ごめん、そうちゃん、私、此処では邪魔者でしかない、よね」
無意識のうちに、弁解口調になっている、そんな自分にもいらつく。
どこまで、私は自分が可愛いのだろう。
「……璃桜、聞いて」
「……………っ、」
顔を手のひらで包まれて、視線を上げさせられた。
琥珀のように色素の薄い瞳同士が交わる。
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