ただ儚く君を想う 壱

桜樹璃音

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第2章 桜の導き

第11話

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何を言いかけたんだろう。
大方、土方歳三の弱みだろうか。

にこりと笑う、宗次郎の笑みが、若干、悪魔のほほ笑みに見えてしまったことは、秘密だ。


「じゃあ、置いてくれますよね?」


数分後。
黙り込んだ土方さんが、はぁぁ、と大きなため息をついた。


「っ、……………しかたねぇな。おい、璃桜」

「は、はい?」


吃驚した、突然名前呼ばないでほしい。
どきどきする心臓に手を当てて、呼吸を整える。


「…………おめぇ、剣技は使えるか」

「はい?」

「は?」


綺麗に、宗次郎とハモってしまった。


「何、言ってるんです、土方さん。璃桜に刀持たせる気ですか。そんなの俺が許しませんよ。断固、却下ですよ」

「私、宗次郎を見つけるために、ずっと剣道やってきたんです。女子で日本一も、取りました。だから、少しは使えると思います」


2人で同時に話した内容に、目を白黒させた土方さんはほっておいて、お互い目を見開く


「駄目だよ! 璃桜は絶対刀なんて持ったら駄目! 璃桜は俺が守るから、絶対、駄目!!」

「そうちゃん、私一生懸命頑張ってきたんだよ! そうちゃんに逢うために毎日おじいちゃんの稽古受けて、おじいちゃんが死んでからも欠かさず稽古してきたんだよ!」


言い合いを続ける私たちに、あきれたように土方さんは言葉を落とす。

「………再開して早々、兄妹げんかか、おい。餓鬼か、てめぇら」

「でも!」


まだ言い募ろうとする宗次郎を遮って、土方さんは言う。


「いいか、総司。璃桜を無事に、ここに置くためには、男になってもらうしかねぇんだよ。実際、剣道やってきたって言ってるし、丁度いいじゃねぇか」

「女中にすればいいじゃない。」

「阿呆。女中だと、女だってばらさなきゃなんねぇだろうが。このオオカミどもの巣窟で、そんなことしてみろ、あっという間に手籠めにされちまうぜ」


最後の方の恐ろしい言葉は、聞こえなかったことにしよう。

ということは、あれか。
私、男として生活するってこと?


理由を聞いて、不本意ながらも了承の声が宗次郎から聞こえた。


「……むー、じゃあ、俺の小姓で」

「はん! 駄目に決まってんだろ。俺の方が格上だ。役職順だボケが」



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