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第2章 桜の導き
第6話
しおりを挟む私と、同じだ。
私がこっちに来てしまった時も、白い光が辺り一面に走ったから。
「……で、なんかよくわかんないけど、どこかの田舎道おっこちた。武士も俺も、何が何だかよくわかっていなかったけれど、正気に戻るのはどちらも早かった」
それはそうだろう。
片や訳のわからない所に突然飛ばされて、人を斬ってしまったのだし、片や親を殺されて、自分も死ぬ寸前の覚悟をしたのだから。
「もう一度すごい形相で刀を振り上げられて、絶対に死ぬ、そう思った。今でも、その顔を、夢に出てくる。けれど、その時、助けがきてくれたんだ。その人は、あっという間にその武士を倒してくれた。
それだけでもありがたいのに、なんと俺のことを家に連れて帰ってくれて、内弟子にしてくれたんだ。それだけじゃなくて、俺の親も探してくれたんだよ」
「優しい人だったんだね。よかったね、そうちゃん」
「うん、本当に。近藤先生に逢えていなかったら、死んでたよ、絶対。本当の親も、見つからなかった。だから、近藤先生にだけは逆らえないんだよね」
…………待った。
今、聞こえたらいけない単語が聞こえた気がした。
「でね、」
「そうちゃん」
上機嫌に話し始めようとした宗次郎を遮って、訊く。
さっきの言葉が、聞き間違いであることを祈って。
「誰に、逢ったって?」
「ん? 近藤先生」
……まずい。
これは、非常にまずい。
その人の傍に今もいるというのなら、宗次郎が今いる場所が、容易く予想できる。
その予想に、血がさぁぁと足元に集中したような気がした。
気と私は、顔面蒼白になっているに違いない。
「………ちなみに、その人の、名前は?」
お願い、予想よ外れて。
けれど、願い虚しく。
「勇。前助けてもらった時は、勝太だけどね」
その答えに、にっこりと笑う宗次郎のことが、生まれて初めて、悪魔のように見えた。
近藤勇。
それは、後世でも名の残る、有名な人。
だって、それは。
誰もが知る、……………新撰組、局長。
その事実に、本当に眩暈がした。
くらりと霞む視界では、宗次郎が言葉の中で、“本当の親”と言ったことなど、微塵も気付かず。
さっきまでの暖かい春風までもが、冷や汗を呼ぶ原因になる。
「そうちゃん、一つ聞いてもいい?」
「うん、いいよ。何?」
「…………そうちゃんは、しんせ、壬生浪士組に、いるの……?」
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