ただ儚く君を想う 壱

桜樹璃音

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第1章 ひとりぼっち

第6話

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「あ! 璃桜お姉ちゃん!」

「ほんとうや!」


遊んでいたのは、璃桜の家から数えて数軒となりに住む、小学生の子どもたち。


「こんにちは、みんな元気?」

「うん! 璃桜ちゃんは、どこいくん?」

「私? 私は、ちょっと用事があるの。みんなは、何をしていたの?」


まさかこんな可愛らしい子どもたちに、お墓参りに行くなど暗い話題は伝えられなくて。
さりげなく誤魔化して、にこり笑って問いかけた。


「鬼ごっこ! もうすぐ春休みが終わってまうから、残りは遊ぶって決めたんよ!」

「またまた~、健二は宿題やってないやろ。私知ってるんよ!」

「ああっ、璃桜姉ちゃんにばれてもうた!」

「駄目じゃない、健二。宿題はしっかりしないといけないよ」

「璃桜ちゃん、もっとしかったってえ!」


いろいろ言い合って、自分も混ざりきゃらきゃらと笑いあう。
屈託ない笑顔に、自分には無い眩しさを感じながらも、この子たちがずっとこうして笑っていられるように、心の底から願った。


「璃桜ちゃん、いかなくていいん?」

「あ、そうだった! じゃあね、みんな! 健二は宿題するのよ!」

「はーい。またね!」

「またな~」


子どもたちと過ごしていたら、あっという間に時間がたってしまう。

早くしないと、お墓参りの時間が無くなる。
境内を通り抜け、壬生寺から外に出ようと、焦るように一歩踏み出した。


刹那。
ぐらり、と足元が崩れ始めた。


「え……、」


何、これ。
何が起きているの。


先ほどまで駆けだそうとしていた足元の地面は、白い光に呑み込まれて。
どんどんと広がっていく白い光に、自身の躰が呑み込まれていく。


それを見て初めに思ったのは。
…………やっと、みんなのところに行ける。

…………そうちゃんに、会える。



ただ、それだけだった。
子どもたちのはしゃぐ声が聞こえていることから、巻き込んでしまう心配もない。


恐怖も何もなく、流れに身を任せていれば、


…………しゃらり。



簪の揺れる音が耳元でした。
それを合図にしたかのように、ざぁぁ、と桜の花びらに体を拘束される。


桜………?

こんな状況に有りながらも、恐怖がないからだろうか、どこか落ち着いていて、思考は正常に働いた。


今は、まだ咲いていないはずなのに。
どんどん勢いを増す花弁に、微かな願いを掛ける。


…………お願いだから、私をそうちゃんのところに連れて行って。


そう願った時。
―――――――璃桜。


低く艶のある声が、耳を掠めて。




ざぁぁぁぁぁ。






一気に舞い散る桜の花弁とそれに伴って放たれる光の渦。


「……………っ!!」


目を開けていられなくなって、瞳を閉じた。










――――――瞬間。

璃桜が立っていた場所は、もとに戻った。

桜の花弁を、一枚残して。



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