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第1章 ひとりぼっち
第5話
しおりを挟む翌朝。
「……目が開かない……」
あの後布団に入っても、暫く眠りに就けなかったからか、重たく腫れ気味な瞼を無理に見開いて、冷たい水で顔を洗った。
もう3月も中旬。
窓を開ければ、まだ肌寒いが、春の木々の香りが入り込む。
その儚い残り香に、なんだか気持ちを持って行かれそうになる。
それじゃあ、駄目。
泣いていいのは一年で一回だけ、3月11日だけだって、決めているから。
「よし」
陰鬱な気分を吹っ切るように、気合を入れて出かける支度をした。
今では珍しいだろう引き戸を閉じて、戸締りをする。
門から一歩踏み出せば、綻びかけた芽を付ける桜の木々が並んでいる。
そう、私の住んでいるのは、京都。
しかも、壬生寺の近く。徒歩20分程度で壬生寺に着く。
その立地で日々を送っている故か、かの有名な新撰組が大のお気に入り。
誠を貫き、儚く散った人達。
それだけでも十分、学ぶに値する人物たちだが、竹刀を振るっている璃桜にとっては、師のように憧れる存在だ。
特に、憧れているのは、新撰組きっての剣士、沖田総司。
彼の三段突きを、一回でも見るチャンスが与えられたなら、必ずどんなことをしても見に行きたいと日々思っているほどの憧れぶりである。
勿論、新撰組だけではなく、幕末史をもっともっと勉強したくて、大学でも歴史を専攻しているくらいだ。
いつか、タイムスリップとかして、会いに行けたらいいなぁ、なんて呑気なことを考え、ゆったりと歩みを進めていけば、春休み中の子どもたちが壬生寺境内で遊んでいる様子が見える。
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