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第1章 ひとりぼっち
第4話
しおりを挟むその後も何年か、警察は捜査を続けてくれた。
けれど、あの忌まわしい事件の犯人は、いつまでたっても見付からなかった。
大震災の時だったというのもあり、捜索は難しかったのだろう。
両親はもちろん死亡。
大好きだった宗次郎は、遺体すら見つからず、行方不明。
いきなり一人きりになってしまった私を迎えに来てくれたのは、祖父母だった。
私は、あの時から、祖父母に育てられてきた。
一言も話せなくなった私を、大事に大事に慈しんでくれて。
道場の師範だったおじいちゃんも、それを献身的に支えていたおばあちゃんも、優しくって怒ると怖いけれど、とっても素敵な人たちだった。
だからこそ、こうして立ち直れて、普通の生活を送っていられるんだと、思う。
その祖父母も、2年前に私の前から居なくなってしまったけれど。
それでも、私のために莫大な預金を残してくれていたから、こうやって大学生をやっていけている。
「……明日、お墓参りしよう」
止まらない涙をぐしぐしとトレーナーの袖で拭い、月を見上げる。
「そうちゃん、どこかで生きてるよね……?」
この希望だけは、ずっと捨てられない。
宗次郎がいなかったことから、一時は彼ですら容疑者になっていた。
けれど、たかが9歳やそこらの少年に、殺人などできるはずがなくて。
その線は、一瞬で消えた。
私も、そうちゃんが犯人だなんて思ってはない。
けれど。
…………死んでいるとも、思えない。
遺体が見つからないというだけで、れっきとした証拠も何もないけれど、ただただ私の勘がそう言っている。
信じたいだけかもしれない。
それでも、可能性が0ではないのなら。
「………そうちゃんがどこにいても、必ず会いに、」
そう決めて、祖父の道場で竹刀を振り続けてきた。
有名になれば、どこかで生きている宗次郎に気が付いてもらえるのではないかと思ったから。
涙を拭って、月に誓う。
「絶対に、見つけ出すから」
10数年間で何度目かわからないこの誓いを再び立てて。
漸く止まった涙を振るい落とすように月に背を向けた。
………………実行するときがすぐそばに来ていたなんて、気が付くこともなしに。
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