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最後のピース
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しおりを挟む「やっぱり私……この人を憎めない……」
俯き言うと、溜め息がふってくる。
「馬鹿だな」
「……分かってる……」
「お前はほんっとうに、馬鹿だ」
「何度も言わないで!私だってそんなの分かってるの!」
「でも、どうせそんな事だろうと思ってた」
「えっ……?」
「で、お前はどうしたいんだ?」
「どうしたいって……。そんなの言ってもどうにもならな……」
と話しながら見たディオンの瞳は、私が何を言っても、まるで全て受け止めてくれるかのような強さを感じた。
まさか、叶えてくれるの?
「……え?だって……そんな事したらディオンが追われる身に……」
「そんなヘマするわけねぇだろ。良いから言え。俺を誰だと思ってんだ」
「ディオン……」
頼もしさに心を打たれていると、「カッコ付けが」と偽物のディオンがぼそっと呟いた。
その言葉を聞いたディオンは、「やっぱ殺す」と言って、殺気を漂わせる。
「ま、待ってディオン!」
引き止めた私に、ディオンは真面目な顔で、「冗談に決まってるだろ。殺るならお前の居ねぇ時に殺る」と言う。
私はその言葉に、思わず「い、居ない時も駄目!!」と叫んだ。
すると、ディオンは「煩せぇ」と言って続けた。
「ほら、さっさとどうしたいか言え。そうじゃねぇとさっきのがマジで冗談じゃなくなる」
ディオンの言葉に、焦りが一気に募る。
「え!?えっと……」
慌てて辺りを確認すると、看守の姿は無かった。
本当に、こんな事をお願いしていいんだろうか。
自分の中でも、まだ色々と答えが定まっていない気がする。
けど、この願いに対しては、もう迷いがない。
「わ、私…………」
私は、強い決心を胸にディオン見上げる。
「この人を解放してあげたい」
「はー、やっぱそうか」
ディオンは少し呆れたように軽いため息をついた。
「え?分かってたの?」
「ああ。だいたいな。でも……本当にいいんだな。何度も言うけど、前世のお前と熊野郎を消した奴なんだぞ」
その言葉に、ビクッしてから静かに頷《うなず》いた。
ずっと、私を殺した犯人は、愉快《ゆかい》犯かサイコパスで、殺すということを楽しんでいるか、なんとも思っていないんだと思っていた。
だからずっと許せなかった。
でも……そうじゃなかった……
実際は、愛する人にもう一度会いたいという強い思いで、やってしまったことだったんだ……
だからといって、それが許されるわけじゃない。
人としてのモラルも何もあったもんじゃない!
でも……被害者であるこの私が許せてしまうなら、それでいいのかもしれない。
ラブの事だけは今でも許せない。
でも、今この人をどうにかしたところで、ラブは帰ってこないから……
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