【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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最後のピース

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ディオンそっくりな男は、どうでもよさそうな顔をしてから「……ああ。そうだな」と言った。

やっぱり……っ!!


「どうして?なんで殺したの?それに、私を別世界に連れて行きたかった理由はなんなの?」
目の前の男は、ジャラリと鎖の音を鳴らして、耳についているピアスを指さした。

「このピアスを、シエルが外すのなら教えてやる」
「えっ!?そんなの……外すわけないでしょ!?」
怒鳴ると、ふっと笑れる。
そしてクイっとあごを上げた。

「じゃあ言わない。別にそんなの知りたかねーだろ」
「知りたいから、わざわざここまで来て、あなたに聞いてるんでしょ!」

そう言うと、ディオンはあぐらのまま、ひざひじをついた。

「じゃあ……、せめて『あなた』じゃなくて、ちゃんと名前で呼べよ」
「えっ……」
「その呼び方……マジで気分悪りぃ」
ディオンはそう言うと目を吊り上げた。


なんとなく、私の知るディオンと分けておきたくて、偽物のディオンを名前で呼ばないようにしていたけど……

「ディ……ディオン……」

そう呼ぶと、偽物のディオンは少し驚いたように目を見開いた後、どこか満足げな笑みを浮かべた。

その瞬間、胸の奥で何とも言えない感情が湧き上がってくるのを感じ、すぐに目をらした。
私は今、どんな顔をしているんだろう。

「……本当は、殺したくなかった」
その言葉に驚いて、私は再びディオンに目をやる。


「でも、シエルが俺以外と結婚するのが、許せなかった……」

えっ……?

「知らなかった。前世に婚約者がいただなんて……。正直、そのことに気が狂いそうなほど嫉妬しっとした」

嫉妬……っ!?
まさか、目の前のディオンは、もう同じ世界のシエルが好きだった!?

驚きを隠せない私は、自分の口元に手を当てた。


別世界の私でも、そう思ってくれていたことが、なんだか嬉しく思ってしまう。

でも……
「嫉妬したから……だから殺したの!?」
そうだとすると、最低最悪だ。

「いいや。それだけじゃない」
「じゃあ何?」
「お前を……生まれ変わらせる為だ」


その言葉に驚いていると、偽物のディオンが殺す前に言った言葉が浮かんできた。

『理論通りに考えると、お前を殺せばあっちのシエルが生まれる……。そうなれば、俺らは…………1からやり直せる』

生まれ変わらせる為に殺した……
その発言に嘘偽りがない気がする。

でも、それってどうなの!?
誰も実現できなかった、平行世界を超えるということを成しげるほどに、元の世界の私が好きだったんだよね?

でも、着いた先にはもう既に婚約者がいてひど嫉妬しっとをした。
そしていくら言っても結婚を止めないから、仕方なく転生もさせれるし殺した。

で、その理論通りに私はこの世界に転生してきた……というわけだよね?


なんだろう。
何かに落ちないような……

ああ、そうか。

「転生させるのが本当の目的なんだとしたら、私を殺す必要なんてなかったんじゃないの?人間、いつかは死ぬんだし」

「いいや。多分、俺があの時点で殺してなかったら、今のお前は存在していない可能性が高い」
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