【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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最後のピース

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この光景を目にした途端、一瞬で胸が苦しくなってしまった。
それはきっと、私が初めて本気で好きになった人の姿と、うり二つだからだろう。


でも忘れてはいけない。
この人は……私を殺した人物だ。


私達の足音が響くと、偽物のディオンはかすかに顔を上げた。

偽物であっても、こんな姿を直視するのが辛い。
でも、私はこの人から聞かないといけない事がある。


私はゴクリと唾を飲み、繋いだ手に力を込めながら、ディオンの後ろを付いて鉄格子の前まで進んだ。

偽物のディオンは、私たちの手元に目をやった瞬間、瞳を曇らせて口を開いた。
「もしかしてとは思っていたが、生きてたのか。……残念だな」


「それは俺のセリフだ」
「これの影響が大きいそうだな……」
そう言って偽物のディオンは鎖をジャラリと鳴らしてみせると、気だるそうに壁に頭を付けた。

「で、何しに来た?とどめでも刺しにきたのか?」
鼻でハッと笑い、どこか遠くをぼんやりと見つめる偽物のディオン。

「そんなんじゃないわ」
私は隣に立つディオンに顔を向ける。
「ディオン。この人って魔法は使えるの?」

「使えねぇはずだ。今はあいつが作った魔法制御のアレが付いているからな」
ディオンはそう言いながら、自分の耳たぶを指で2回はじいた。
偽物のディオンの耳たぶに目を向けると、そこにはかつて私に付けられていただろうピアスが光っていた。

「闇魔法も使わずに奇跡的に出来た偶然の産物らしいが、効果は絶大らしい。俺らくらいの魔力でも、本当に一切魔法が使えなくなるようだ……って、なんでそんな事聞くんだ?」

「そっか……」
なら、大丈夫よね。

「ディオン。無理なお願いかもしれないんだけど、あの人と2人にして欲しい」
「はぁ!?」
ディオンは、開いた口が塞がらないといった顔を向けてくる。
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