【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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時を超えた狂愛の檻

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「えっ……!?」
すぐに飛んできた方向を振り返ると、そこには今にも息絶えそうな顔をした偽物のディオンが、こちらに指を向けていた。

「……ってめぇ!!」
一瞬で目を吊り上げたディオンが、偽物のディオンの方に足を向ける。
すると、ディオンは突然こめかみに手を当ててフラついた。

「うっ……」

私は2人の間に飛び込んで、両手を向けて叫んだ。
「やめて!!」
2人とも驚いた顔を向け、動きが止まった。

「もう……やめて……」
こんなの、見てらない。


「なんでこんな奴をかばうんだよ!こいつはお前をさらい、お前の知らない世界に連れ去るつもりだったんだぞ!分かってんのか!?」
ディオンが私をしかるように怒鳴る。

「わ……分かってる……!」
「なら……」
「それに……この人が私を殺した人だって事も……」
「……は?殺した?」

「前世の私は、この人に殺されたの」


「……っ!!」
ディオンは、私の言葉を聞いたあと、信じられないといった顔を偽物のディオンに向けた。
だから、私はすぐにディオンの服のすそを掴んだ。

「私は死んだあと、暗い世界でずっと正体も分からない私を殺した人を憎んでいた。そしたら急に光が差して……この世界で生を受けた。だから、私はずっと復讐を誓ってきた。それが……私が転生してきた使命だと思ったから」

「そんな話、あの時に言ってなかったな」
その言葉に、私はためらいながらうなずいた。

「……前世の話をしたあの日、私は……言えなかったの。言ったら……ディオンに嫌われるって思ったから……」
そう話し終えると、私はぎゅっと下唇を噛んだ。

「……別に、そんな事で嫌わねぇよ」
ディオンの言葉に、少し心が晴れたような気がした。

「でも、じゃあなんで止めるんだよ。お前はこいつに復讐を誓ってきたんだろ?」
「うん……。そう……なんだよね……」
私を殺した、偽物のディオンに目を向ける。

先ほどよりは少し回復したように見えるが、まだ起き上がる事は出来なさそうだ。
苦しそうな表情を浮かべるその姿に、やはり胸が痛む。

ひたいに手を当て、眉をしかめながら、私は口を開いた。


「変だよね……
この人のせいでラブも消えて、その事もこんなに悲しいし憎んでるのに……。なんで……」
そう話している最中に、なんの涙か分からない涙があふれてきた。

「分からないけど……この人が苦しんでいる姿見ると、悲しく……なって……ディオンと、同じ姿だからなのかな……?」

あふれて来た涙をぬぐうと、ディオンは私の頭に手を伸ばして来た。
「馬鹿か……。俺と同じ姿でも、奴は……」


その時――

「ゔっ!!」
突然、目の前のディオンが胸を押さえ、そのまま顔をゆがめてしゃがみこんだ。

「え!?どうしたの!?」
ディオンの息が荒くなり、何が起きたのかと覗き込むと、「や……りやがったな……」と、ディオンは偽物のディオンにらんだ。

偽物のディオンに目を向けると、不敵な笑みを浮かべていた。

「まさか、何かしたの!?」
と叫んでいる間に、ディオンは胸を抱えたまま床に倒れてしまった。

「きゃぁ!!」
みるみる青ざめていくディオンの顔、苦しげにうなり声をあげ始めるその姿に、恐怖が一気に押し寄せる。

すぐにしゃがみ込んで、倒れたディオンに手を伸ばそうとした瞬間、偽物のディオンがとんでもない事を口にした。


「クク……さっきの攻撃の時、ものの……数分で死ぬどくを……血管に入れてやったんだよ……」

毒……っ!?
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