【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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時を超えた狂愛の檻

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俺の目に、再び上半身が下着姿のまま縛られているシエルが映り、ひどい怒りが一瞬で湧き上がる。

今すぐにでも奴を八つ裂きにしたいが、ここでそんなことをすれば、シエルにすぐ止められて終わるだけだ。

あと少しの辛抱だ。


俺が懸念けねんしているような事は、実際には起こってないはずだ。
奴は俺は似ているはずだから。

だから、シエルはこんな格好であっても――手は出されていない。

俺は、そう自分に言い聞かせるようにしてから、シエルに問いかけた。

「お前、なんでそんな恰好かっこうなんだ?」


シエル目線――


『もし俺そっくりの奴を見かけたら、そいつは悪魔だから死ぬ気で逃げろ』
そんな言葉が頭の中を反すうする。

でも、今の話やこの状況……どっちが私の知るディオンか全く分からない。


戸惑っている間に、髪の短いディオンは私の前で立ち止まり、同じ目線までかがむと、私の胸元を指さし問いかけてきた。

「お前、なんでそんな恰好かっこうなんだ」

「あなたが……悪魔なの?」

「はぁ!?あー……お前、記憶操作されてんのか?それに、なんだこれ」
髪の短いディオンは、私をの耳元を見るなり、手をかざしてきた。

敵なのか味方なのかも分からない私は、思わず目をぎゅっと閉じる。


すると――
全身に感じていた窮屈きゅうくつな感覚がスッと消えた。
私は驚いてパッと目を開けた。


「本当に、いつもいつも世話のかかる奴だな。お前は」

かざされた手が視界から消えると、代わりにかすかに安堵あんどしたような表情を浮かべたディオンの顔が映った。

その瞳に、なんだかとてもホッとした気持ちになった。


カチッと何かが落ちる音が耳に入る。
下を見ると、ディオンがくれたピアスが落ち、その上に縄がパサッと落ちている様子が映った。


次の瞬間、私の髪の毛先が金色に輝き始める。

その光は毛先から上へと伝うように、髪全体が金色に染められていくのを感じた。
すると、全身に力がみなぎるような感覚が広がっていく。


それと同時に、失っていた記憶がじわじわと脳裏に浮かび上がってきた。
私は、よみがえってくる記憶に、思わず口元に手を当てた。
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