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時を超えた狂愛の檻
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しおりを挟む「な……何?これ。行くってどこに!?ちゃんと説明して」
「あとで説明する。とにかく行くぞ」
そう言って手を伸ばしてくるから、私は、ぐったりとしたラブを守るようにして両手で抱えた。
「いやっ!説明してくれないんだったら、行かない!ここに来てからずっと変だよ!なんか……ディオンなのにディオンじゃないみたいで……まるで、私の知ってるディオンとは別人みたい!」
私が声を上げると、ディオンはハッとした表情で天井を見上げた。
その仕草にデジャヴを感じたのに、いつの事だか思い出せない。
ディオンは再び私に視線を戻したと思うと、焦った様子で私の二の腕を掴んだ。
「ヤバイ!時間がない!」
ディオンの手の力は強く、私を魔法陣に引きずり込もうとする。
その力は、腕に食い込んで痛いほどだ。
「ちょっと!痛い!」
何度も訴えたのに、無視されて強引に引っ張られる。
私は必死で抵抗した。
「本当に痛いから、離して!!」
そう叫んだ直後、ずっと目を覚まさなかったラブが、突然私の腕の中で目を開けた。その事に酷く驚いた。
すると、ラブは私の腕からすり抜けてディオンの手に噛みついた。
その次の瞬間――
「うぜぇ」
ディオンはバッと手を振り払い、ラブは勢いよく壁に叩きつけられた。
その様子がこの瞳に映った時、私の心が一瞬で凍り付いた。
小さな体がゆっくりと床に落ちていく様子が、まるでスローモーションのように感じられた。
「ラブ!!」
慌てて駆け付けようとした私は、ディオンに抱えられるようにして、魔法陣側に引きずられていく。
「ラブ!ラブ!!やだ!離して!!」
暴れても、叫んでも離してくれない。
「マジでヤベぇ。ついにこの場所に気付かれたかもしんねぇ。クソッ!なんでこんなタイミングで……」
そう呟くディオンの言葉は相変わらず理解できない。
それに、何やら外がひどく騒がしい気がする。
でも、ラブのことで頭がいっぱいだった私は、それに気を向ける余裕なんてなかった。
「ラブ!!ラブーー!!」
私は決死の思いで、自分のパジャマをスポっと脱ぎ捨てくぐり抜け、ディオンの手から逃げ出した。
すぐにラブの元へ駆け寄り、そっと抱き上げると――ぐったりとしたラブは、もう動く気配がなかった。
「ラブッ」
痛々しい頬が目に入る。
その姿に、心の中に悲しみとディオンへの強烈な憎しみが沸き上がる。
その時、突然ラブの体が光に包まれ始めた。
「ラ……ラブ……?」
光は納まることなくどんどん眩しくなったと思うと、綿毛のように拡散して周囲へと舞い散っていった。
それは、本当に一瞬の出来事だった。
私の手の中には――もうラブは居ない。
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