【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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時を超えた狂愛の檻

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「え?どこに!?」
足がもつれそうな程に早く廊下を歩かされて「早い……」と言っても歩く速度を変えてくれない。

行先は、方向からして地下に続く階段のようだ。

「ちょ……ちょっとディオン?何?ここ降りて大丈夫なの?いつもここは駄目だって……」
「これで……もう邪魔者はいなくなる」
ディオンは、私に背を向けながら独り言のようにつぶやいている。
私の声なんて聞こえてないようだ。



暗くて明かりもない階段を下りさせられると、突き当たりにあるドアがギィッと音を立てて開き、薄暗い部屋が目の前に現れた。

部屋の中央には、赤黒い線で描かれた魔法陣のようなものがあり、その線上にはルビーのような赤い石がいくつも並べられていた。

その光景はあまりにも不気味で、思わずつばを飲み込んだ。
「何、これ……?」


ディオンは私の質問に、ニッと口角を上げて手を広げた。
「ついに出来たんだ!この前は早とちりして危うく失敗しかけたが、今度こそは完璧だ!」

「……えっ?」
この前?失敗?

「この魔法陣を完成さすのに、どれほどの時間がかかったか……。世界中を駆け回り、必要な素材を集め、気が遠くなる程の時間をかけて、俺の魔力を注ぎ続けた!でも、そんなのも今日で終わりだ!」

「ねぇ……。さっきから……なんの話をしてるの?」
そう問いかけると、ディオンの目が戻って来る。
目が合うと、ディオンは目を緩め、ゆっくりと私の方に足を向けた。
なぜか、自分の足が自然と一歩後ずさりしてしまう。


「……これで、シエルと俺だけの世界が築ける……」

シエルと俺だけの世界?
さっきから、何を言ってるのかサッパリだ。

「さあ、行くぞ」
「えっ、ま、待って!」

再び強引に手を引っ張られて、思わずその手を振りほどく。


「……シエル?」


……怖い。

今のディオンが、なんだか怖い……っ!

それに、この魔法陣には乗ってはいけない気がする……
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