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時を超えた狂愛の檻

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「嫌だ」
「ええっ!?ケチ!凄く時間かかったのに!」
「知った事か!お前が勝手にやったんだろ」
そう言うと、シエルはパンパンに口を膨らませた。

「お願いっ」
手を合わされて一瞬戸惑った俺は、断固なる意志で「やらねぇ」と言って押してくる紙を再び突き返した。

「ねぇ。一生のお願いだからっ」
「一生は死ぬほど長げぇんだよ。もっと大事な時に取っとけ」

俺の言葉を聞いたシエルは、一瞬ビクっと震えて、瞳から光が消えたように見えた。
でも、すぐにいつも通りのシエルに戻り、それが見間違いだったんだと思った。

「い、今が大事なの!」
シエルはそう言って、真剣な眼差しを俺に向けてきた。
その時、このお願いはただのお願いじゃなくて、何かもっと深い意図があるのかもしれないと思った。

「第一、これを解いたら何があるんだよ」
「それは……解いてからの秘密だよっ!言ったら面白くないじゃん」
「まぁ……、そうだろうけど」
「本当に駄目なの?」
悲し気な目で見られて、俺はついに観念してしまう。


大きなため息をついて口を開けた。
「……分かった。やりゃーいいんだろ」


「やった!」
バンザイをして喜ぶシエルから魔法で紙をピッと取り上げ、シワを綺麗に伸ばした。


どうせ暫く休みだって学園から言われた所だし、ちょうどいいか……


そう思い、俺は翌日から謎を解くために世界を回ることにした。
最初は順調だったが、解き進めるうちに、やたらと遠回りをさせられている感覚があり、無駄に時間がかかっていることに違和感を覚えた。
そして、半月をかけて辿り着いたのは、なんとも小さな箱だった。

箱を開けると、中にはシエルからの手紙が入っていた。

シエルからの初めての手紙に、少しワクワクしたような気持ちで開封し、読み進める。
だが、読み進めるうちに、次第に自分の顔がこわばっていくのを感じた。
なぜなら、この手紙は、まるで遺言状ゆいごんじょうように感じられたからだ。

俺との時間が本当に楽しかったことや、俺に対する感謝の気持ちが長々とつづられていた。

「私がもし……死んでも、来世で会いたい……?どういう事だ……」

最後の文字を読み終えた瞬間、胸に嫌な予感が込み上げ、俺はすぐに立ち上がった。


真相を確かめるべく、俺は大急ぎで学園に戻った。

最速で移動してNIHONに戻って来た時には日付が変わり、朝日が昇っていた。
時計塔の針を見ると、ちょうど授業が始まった時間で、俺は真っ先にシエルのいるSクラスの教室に向かった。

でも、いつもの教室にはなぜか誰もいない。
隣の教室を覗いても、グランドを見ても、特別教室を回っても、人の姿はない。

「下級棟には生徒や講師がいるのに……体どうして……」
あごに手を当てながら、図書館の屋根の上に降り立つと、グランドの上空に大きな輪っかが現れた。


「なんだ?あれは……」
移動系の魔法?

そう思った瞬間、グランドの中心に突然、大勢の人々が現れた。


「……は?」
驚きながらよく見ると、現れたのはそのほとんどが生徒で、何故か多くの者が怪我をしていた。

生徒たちに急いで回復魔法をかける同級生や、グランドの端で待機していたかのような講師や看護師たちが、次々と駆け付け、場は一気に混乱に包まれた。

数年近く講師をしていたが、今みたいな状況を見るのは初めてで、全く理解出来ないまま、俺はグランドに足を降ろした。


すると、俺を見つけたほぼ話したこともないBクラスの講師が、息を切らしながら駆け寄ってきた。

「カミヅキ講師!よかった!今、生徒たちが戦争から帰ってきたとこなんです!思ったより被害が大きくて……回復を手伝ってください!」

「……は?戦争?」
眉を寄せて再び倒れている生徒たちに目を向けると――
その怪我人の山から、まったく血色のないシエルが目に飛び込んできた。

瞬間、時間が止まったように感じた。



「……シ……シエル?」
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