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招かざる訪問者

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ん?ああ、そっか。ディオンは忙しいもんね。
送るのが難しいって事だよね。

「いいよ。私一人で帰るし。ディオンは研究を続けて」
「はぁ?無理だろ。方向音痴のくせに」
「うっ……」
どうしてそれを知ってるの。

「それに、ここがNIHONからどれだけ離れてると思ってんだ」
「知らないけど、きっとどうにかなるよ。魔法もあるし、世界地図だって持ったし!」
と、世界地図を広げて見せる。

「はー、簡単に考えすぎだ。間違って訳の分かんねー国に行くと、一生帰れなくなることだってあるんだぞ」
「じゃあ出来るだけ海の上を通って行くよ」
「馬鹿か。海の上も安全じゃねぇんだよ。何かあったらどうする気なんだ」

異常に過保護なディオンの発言に、私は首をひねった。
「前から思ってたんだけど、ここに来てから変じゃない?その、今やってる研究と関係あるの?」
私が質問すると、ディオンは不機嫌そうにこちらをチラッと見るだけで、何も答えなかった。



その後、いくら言っても帰ることを反対された私は、いったん部屋に引きこもった。
そして「もういい!」と叫びながら、反抗的な気持ちでリビングで帰り支度を始める。

「一人で帰るって言ってるのに!どうして駄目なのよ!!なんて横柄おうへいなの!」

ラブが心配するほどにカンカンに怒っていると、突然ある台詞セリフが頭に浮かんできた。


『……と手を出せなかったが、理論通りに考えると、ただお前を殺せばいいだけだ……』


「……ん?」
その言葉が引っかかり、思い出そうと頭を巡らせた瞬間、ひどい頭痛が襲ってきて、まるで頭が割れそうになった。

「うっ……また……」

なんでいつも……


「はぁ……はぁ……」
ズキズキと痛む頭を抱え、そばに会ったソファに腰を下ろす。
そしてすぐに、さっき浮かんだ台詞セリフを追いかけるように無理やり自分の記憶を引き出そうとこころみた。



『放してください』

『嫌だ。結婚しねぇって言うんだったら放してやる』

酷い頭痛に、ついには吐き気まで襲ってくる。 
でも、もう少しで思い出せそうな感覚に、私は止めることなく口元に手を当てた。
「うっ……」


…………

……

懐かしい景色が広がっていく。
遠くからぼんやりと見つめるような感覚で、人気のない道が見える。
信号、横断歩道……これが前世の世界だとすぐに分かった。

私はまだ客観的にその景色を見ているだけだったけど、次第にその光景に引き込まれるような感覚が訪れた。


足音が聞こえてきて、風が顔に当たる。
まるで、そこに自分が立っているように――


「からかってなんてねぇよ」
突然、声が耳に飛び込んできて、体がその場に溶け込む。

「これが、からかってないならなんなんですか!?」
「……お前じゃないと駄目なんだよ!」
「えっ……」
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