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招かざる訪問者
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何が?と聞かれても、うまく言葉にできないけど……今の状況も、ディオンの態度も、何か引っかかるものがある。
あの時、首を縦に振らなかったから?って、関係ないよね……?
目を閉じて、学園から勝手に連れ出された時のディオンとの会話を思い出す……
『このまま学園を出て、俺と暮らさないか?』
『何言ってるの?冗談?』
『俺は本気だ』
『え……なんで?学園は?そんな事したら、すぐに追われる身になっちゃうじゃない』
『ここに来る時に、お前の代わりを置いて来た』
『えっ……もしかして、その私の代わりに卒業するまで私のフリをさせるってこと?』
『ああ』
『……なんか嫌……っ!そんなの!確かに、あの学園に縛られているのは嫌だし、もっと自由になりたいし、ディオンともっと気軽に学園の外に出たりしたい!でも、みんなが卒業に向かって頑張っているのに、私だけそんな抜け駆けみたいにあの学園を出るのは嫌っ』
『…………分かった』
『でも、私の事を考えてくれた事は……嬉しい。ありがとう』
ディオンは頬を掻いて口を開けた。
『じゃあ、旅行っていうのはどうだ?』
『旅行?』
『どうせ冬休みだし、短期間の旅行なら嫌じゃねぇよな?』
『あ……うん』
ディオンと旅行……
その事に急に胸が躍り出す。
『なら、行くぞ』
『え!?このまま行くの!?私何も持ってきてないよ!』
そう言って今のパジャマ姿をアピールする。
『全部準備してやる』
えぇ~~!?
…………今思うと、ディオンはどういうつもりで一緒に暮らそうなんて言ったんだろう?
私の事を好き……とか?
いや、そんな訳ないよね。
女性に興味も無いし、胸が大きい人が好きだろうし……
自分の胸に手を当てて、思わずガクっと項垂れる。
そういえば、ここに来た時って、どんな感じだったっけ……
そう思って記憶を振り返ろうとしたした時――
ディオンに手を引かれて薄暗い階段を下りて行く映像が、途切れ途切れに流れ始める。
『この平行世界から抜けれれば……』
『えっ?平行世界?』
魔法で開ける重厚なドア。
窓もない薄暗い部屋。
そしてディオンが呪文を唱えると、浮かび上がってくる――怪しげな赤黒い魔法陣。
『やめてっ!』
嫌がる私を、無理やり魔法陣の上に押しつけるディオン。
必死に訴えても、ディオンは私に無視を続けていた。
その時、突然、魔法陣から浮かび上がっていた怪しげな光がスッと消えた。
次の瞬間、ディオンは取り乱したように頭を掻きむしり、髪を掴んで叫んだ。
『はぁ!!??』
その声に、私は驚きビクッとしてしまう。
『どうして!!今まで成功していたのに、なんでだ!?』
声を荒げたディオンは、ハッと魔法陣を見つめ、静かに呟いた。
『まさか……あの魔法石だけ不完全だったのか……?』
私は、驚く暇もないほどに、次々と断片的に蘇る記憶に、思わず口元に手を当てた。
この世の終わりのような顔をしたディオンの映像が、突然途切れ始めたと思うと……ザザっと頭の中の映像が砂嵐のようにかき消された。
「あれ……?」と、頭を押さえて独り言を漏らしたその時……
ポンと頭に手が乗る感覚がした。
「また勝手に出たのか?」
顎を上げて見上げると、呆れ顔のディオンが私を見下ろしていた。
あの時、首を縦に振らなかったから?って、関係ないよね……?
目を閉じて、学園から勝手に連れ出された時のディオンとの会話を思い出す……
『このまま学園を出て、俺と暮らさないか?』
『何言ってるの?冗談?』
『俺は本気だ』
『え……なんで?学園は?そんな事したら、すぐに追われる身になっちゃうじゃない』
『ここに来る時に、お前の代わりを置いて来た』
『えっ……もしかして、その私の代わりに卒業するまで私のフリをさせるってこと?』
『ああ』
『……なんか嫌……っ!そんなの!確かに、あの学園に縛られているのは嫌だし、もっと自由になりたいし、ディオンともっと気軽に学園の外に出たりしたい!でも、みんなが卒業に向かって頑張っているのに、私だけそんな抜け駆けみたいにあの学園を出るのは嫌っ』
『…………分かった』
『でも、私の事を考えてくれた事は……嬉しい。ありがとう』
ディオンは頬を掻いて口を開けた。
『じゃあ、旅行っていうのはどうだ?』
『旅行?』
『どうせ冬休みだし、短期間の旅行なら嫌じゃねぇよな?』
『あ……うん』
ディオンと旅行……
その事に急に胸が躍り出す。
『なら、行くぞ』
『え!?このまま行くの!?私何も持ってきてないよ!』
そう言って今のパジャマ姿をアピールする。
『全部準備してやる』
えぇ~~!?
…………今思うと、ディオンはどういうつもりで一緒に暮らそうなんて言ったんだろう?
私の事を好き……とか?
いや、そんな訳ないよね。
女性に興味も無いし、胸が大きい人が好きだろうし……
自分の胸に手を当てて、思わずガクっと項垂れる。
そういえば、ここに来た時って、どんな感じだったっけ……
そう思って記憶を振り返ろうとしたした時――
ディオンに手を引かれて薄暗い階段を下りて行く映像が、途切れ途切れに流れ始める。
『この平行世界から抜けれれば……』
『えっ?平行世界?』
魔法で開ける重厚なドア。
窓もない薄暗い部屋。
そしてディオンが呪文を唱えると、浮かび上がってくる――怪しげな赤黒い魔法陣。
『やめてっ!』
嫌がる私を、無理やり魔法陣の上に押しつけるディオン。
必死に訴えても、ディオンは私に無視を続けていた。
その時、突然、魔法陣から浮かび上がっていた怪しげな光がスッと消えた。
次の瞬間、ディオンは取り乱したように頭を掻きむしり、髪を掴んで叫んだ。
『はぁ!!??』
その声に、私は驚きビクッとしてしまう。
『どうして!!今まで成功していたのに、なんでだ!?』
声を荒げたディオンは、ハッと魔法陣を見つめ、静かに呟いた。
『まさか……あの魔法石だけ不完全だったのか……?』
私は、驚く暇もないほどに、次々と断片的に蘇る記憶に、思わず口元に手を当てた。
この世の終わりのような顔をしたディオンの映像が、突然途切れ始めたと思うと……ザザっと頭の中の映像が砂嵐のようにかき消された。
「あれ……?」と、頭を押さえて独り言を漏らしたその時……
ポンと頭に手が乗る感覚がした。
「また勝手に出たのか?」
顎を上げて見上げると、呆れ顔のディオンが私を見下ろしていた。
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