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招かざる訪問者
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しおりを挟む私は肩を落として、玉子サンド入りのバスケットを手にして別荘の外へと出た。
すぐにザザン……ザザン……と心地いい波の音がハッキリと耳に届く。
大きく深呼吸をすると、濃厚な潮の香りがした。
足元には、柔らかな白い砂浜がくすぐったい感触を伝えてくる。
私の目には、どこまでも広がる海が私の瞳に映り込む。
空と海の境界が曖昧なほどに澄んでいて、波は優しく岸辺に寄せては返している。
心が洗われるようなこの景色に、思わずため息が出た。
「ここの海、好きだな……」
ここに来て、3日経った。
でも、このコバルトブルーの海には毎回感動を覚える。
海を見て立ち尽くす私の横を駆け抜けるラブは、一目さんに海の中に入って小魚を上手に取りはじめた。
私はそんなラブを見て笑みをこぼしながら、砂浜に腰を下ろした。
横に置いたバスケットから、いつもの絶品玉子サンドを取り出し、パクリと1口食べると、口の中に新鮮な卵の味が広がって行く。
「美味しっ」
ふと淡い空を見上げると、宙にディオンの魔力が見えた。
「一体、なんの魔法をかけてるんだろう?」
この小島をぐるりと取り囲むように、何かの魔法がかけらているのは来た当初から知っていたけど……未だによく分からない。
それにしても、大好物の玉子サンドに素敵な景色。
本来なら言うこと無しなんだろうけど……
「淋しい……」
私って、意外と淋しがりやだったのかな?ずっと、毎日誰かと一緒だったから?
それに、ディオンとデートみたいなものができるかも、なんて期待してたのに、こんなにほっとかれるなんて……正直、ショックが隠せない。
ディオンは、あの家の地下にある部屋に、一日の半分くらいは引きこもっている。
何かの研究をしているらしいけど、詳しいことは教えてくれない。
ただ『もうすぐ出来る』とだけ言っていた。
ディオンがそんな状態だから、私は未だに復讐のことを打ち明けられずにいる。
こんな遠い場所まで来て、一体何の研究をしているんだろう?
ほっとくなら、無理に私を連れてくる必要なんてなかったんじゃない?
何かが……変。
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