【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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招かざる訪問者

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やっぱりヴァイスも同じ考えか。
普通に考えれば、誰だってそう思うよな。

まぁ、とりあえず収穫は無しだな。


シエルは、きっと世界中のどこかで生きているはずだ。
もしも殺すことが目的だったなら、あの部屋で殺していただろうから。

だが、一刻も早く見つけ出さねぇと、取り返しのつかない事になるかもしれない。こうしている間にも、どこかで怯えて震えているはずだ。


問題は、この広い世界のどこから手を付ければいいのか、と言う事だ。

俺には過去に、2年をついやしても見つけられなかった経験がある。
だからこそ、ただ闇雲やみくもに探しても意味がないことを、痛いほど分かっている。

せめて、何か手がかりでもあれば……


その時、不意にヴァイスが口を開いた。
「そういえば……、カミヅキは昨年の今頃、南の島のラグーナ島辺りにいたかい?」

俺は眉をひそめた。
「は?ラグーナ島?どこだよそれ、南の島なんて行かねーよ」


「横断することは?」
南の島を横断……
腕を組んで世界地図を思い浮かべる。

「数年前なら通る事はあったかもしんねーけど、去年は通ってねぇな」
2~4年前位はちょうど世界中を回って奴を追いかけていた。
けど、昨年はちょうどNIHONから一歩も出ていない時期だ。

「数年前じゃない。新しい奥さんとハネムーンに行った時だから、ちょうど1年前で間違いない」
知りたかねぇけど、こいついったい何人の配偶者がいるんだよ。
呆れてドン引きした目をヴァイスに向ける。


「そのラグーナ島がなんなんだよ」
「1年前、ちょうどそのラグーナ島辺りでカミヅキの魔力を感じた」

その言葉に驚いて、思わず目を見開いた。

「あの辺りはハネムーンで有名なリゾート地なのに、カミヅキの魔力を感じて妙だと思ったんだ。カミヅキはずっと女っ気が無いからね。
妻優先だったから、その魔力元を確かめることはしなかったが……」

「……それは俺じゃねぇな」
きっとそれは、俺のフリをしていた奴だろう。

……ん?
俺がいない時にまで俺のフリをしているのか?
そこまでする必要って……?


「だろうね。今の話を聞いてそうだと思ったよ。
そういえば、ラグーナ島にひと月ほど滞在していたんだが、帰る時にもあの魔力を感じたよ。あの時に感じた魔力量は、確実にカミヅキと同等だったと思う。違和感が全く無かったからね」

……えっ!?俺と同等だ?
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