【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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招かざる訪問者

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っ」
手にビリっとしたするどい痛みが残る。

「……は?」
なんだ、今の……

「……まさかっ!」
次の瞬間、俺は奴にめられたんだと思った。


…………

……

あれから、何時間も解除魔法をこころみて、展望台から出てこれた頃には朝焼け空だった。

「マジかよ……」
もう朝じゃねぇか。

朝日を見ては、俺をめた奴にとてつもない怒りが湧き上がる。


俺の魔力が今、通常の半分以下だと言う事もあるが、そうでなくても手こずる程の高度な魔法だった。

これは、上級魔法使いなんてレベルじゃねぇ。



まさか――ヴァイスが!?

いや、でもあいつは勝手に参戦したことが明るみに出て、NIHON側からの酷いバッシングを受け、今は塔の上部に軟禁されているはずだ。


じゃあ、一体誰が……


「とりあえず、シエルの部屋にかけたシールドを解除しに行かねぇと」
尻尾がつかめなかった事に残念な気持ちを抱きながらも、気持ちを切り替えるために軽くため息をついた。

シエルでも解除できないくらいの強力なシールドを何重もかけたから、このままだとあいつ、部屋から出られずに泣きべそをかくかもしれないしな。

そう思った次の瞬間、俺の目に飛び込んできたのは――



シールドが一切かかっていない、無防備なシエルの部屋だった。


心臓が凍りつくような衝撃に、息が止まる。


「…………は?」


即座に出窓を開けて部屋に飛び込むと、急いで布団をめくった。
でも、そこにシエルの姿はない。

「おい!シエル!どこにいるんだ!」
浴室のドアを開けても、熊野郎すらいない。

部屋は一切荒らされた形跡がなく、シエルの魔力の痕跡こんせきすら感じられない。
この部屋どころか、この学園全体からも、シエルの魔力が完全に消え去っている。

魔力が感知できないということは、それほどに遠くにいるのか……あるいは、もうこの世にはいないかのどちらかだ。

「シエル……」


信じがたい現実に、血の気が一気に引いていき、目の前が真っ白になった。




ディオンが展望台に閉じ込められていたその頃、シエルは――

私の目の前には、大小3つの月が水平線に浮かび、その柔らかな光が夜の海を幻想的に照らしている。

ザザン、ザザンと心地よいリズムで押し寄せる波音が、まるで自然の楽器のように静かな夜を彩り、暗い水面に宝石のようなきらめきを散りばめていた。

「ひゃー!海だ!」
砂浜では、ラブがしぶきを上げて無邪気に水浴びを楽しんでいる。
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