【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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招かざる訪問者

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「は、話があるんだよね?」
「……えっ、ああ……」
歯切れの悪い雰囲気で後頭部をかくディオン。

「実は、私も話があるの。だからディオンの後でいいから聞いてほしいんだけど……」
今度こそ言う!
私が復讐を成しげようとしている事を……

全部打ち明けて、ディオンへの疑いを晴らしたい!


私の言葉を聞いたディオンは目を細め、すっと手を出してきた。
その行動に不思議に思った時、ディオンは驚くことを口にした。


「じゃあとりあえず移動しよう」
「え……移動!?」
移動って、学園から出るって意味だよね?
正直すごく出たいけど、もうこんな時間だし……

「えっ?ここで話せないような話なの?」
窓だって閉まってるし、ディオンお得意の魔法を使えばいいのに。

「ここだと……」
「ここだと?」


ディオンがふと私を見つめる。
その瞬間から、ディオンの視線が私に固定された。

次第にディオンの目に熱がこもっているように見えて来て、私はなんだか恥ずかしくなってしまった。

「な……何?」


私の質問にも答えないディオンは、すっと手を伸ばしてくる。
そして壊れ物を触るかのように私のほほに触れてくるからドキっと胸が鳴った。
「……っ!?」

肌を確かめるようにほほでるその手は、フェイスラインにそってあごに滑り、下唇に触れてきた。
そして謎のため息が落とされる。

ほうけているようにも見える、見た事のない表情をするディオンの顔に、ドキドキしながらも、当然のように違和感が湧き上がった。


ディオンが……変?
いや、変なのは前からなんだけど……

「ディオン……?」



ディオンが話そうとしている事に関係しているのだろうか?
だとしても、ブレスレットのことを覚えていないなんて、どういうこと?つい数時間前の出来事なのに……


「……いつもの俺って?」
「えっ?」
そんなの聞かれると困る。

「えっと……こんな感じ?」
私は、怒った顔をして腕を組んだり、肩をすくめてため息をしたり、ダルそうに横になったりして全身でディオンを表現してみた。

「ふっ……」
笑い声が聞こえて来て見ると、目を細くして笑うディオンが居た。
その瞬間、ディオンはすっと目を開け、笑顔の裏に鋭い何かを感じた。

「あー、思ってたよりヤバいな」

話の流れからして、そんなはずないのに……
ディオンの目に殺意のようなものが宿っているように見えた。

嫉妬しっとで狂いそうだ」
「し……嫉妬?」
なんで?誰に?

「とりあえず移動するぞ」
そう言ってディオンは私の手を取る。

「待って!私、外だと言いにくいかも……」
「ん?」
「私が言いたい事、本当はずっと前から言いたかった事なんだけど……でも、ずっと言えなくて……。だから全然知らない所だと、なんか言えなくなりそうで……」

「……そうか。じゃあシエルの話したかった事はここで聞こう」
ディオンはそう言うと、するっと指を絡《から》ませてきた。
「……っ!!」
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