【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

文字の大きさ
上 下
324 / 395
招かざる訪問者

18

しおりを挟む

夜、私はベッドに横たわり、目を閉じて眠ろうとしていた。
けど、遠くから聞こえる賑やかな声に、なかなか眠れない。

今日は講師たちの仕事納めの日だったらしく、女子寮の向かいにある講師棟で打ち上げが行われているようだ。


ふと目を開けて、机の上に並んだ誕生日プレゼントの数々に目をやると、自然と微笑ほほえみがこぼれた。

そして、自分の手首を布団からそっと出して見つめた。

「ふふ……」
私の手首には、ディオンがくれたブレスレットが、月明かりを受けてキラキラと輝いている。

「嬉しい……」
ディオンが、こんな素敵な物をくれるなんて……

私は微笑みながらブレスレットにキスをした。

今夜はなかなか眠れそうにないかもしれない……そう思った時、視界の端で何かが動いた気がした。
そちらに目を向けると、薄暗い部屋の中に大きな黒い影が見え、一瞬ドキッとする。


でも、目を凝らすと――


「ディオン!」
私は勢いよく起き上がった。


本当に来たんだ。

『言いたい事があるなら夜でもいいから来て』って自分で言っておきながら、無言で現れただけでこんなにもビックリしてしまうなんて。
いや、いきなり話しかけられても結局は驚いてしまいそうだ。

とか考えながら、ドドドと音を立てる自分の心臓に手を当てた。


「起きてたんだな」
「え……?うん」
プレゼントがあまりにも嬉しくて興奮こうふんしてた……だなんて、さすがに恥ずかしくて言えないけど。


「ディオン。さっきは言いそびれたけど、このブレスレットありがとう。凄く嬉しかった」
ブレスレットに触れながら目を細めて言うと、「ブレスレット?」と眉をひそめられた。

「え……?」


ディオンは、私の手首についたブレスレットを見るなり怪訝けげんな顔に変わっていく。
そんな様子に、訳が分からなくなる。

「ほら、さっきディオンがくれた……」と説明すると、ディオンの目が恐ろしい程に吊り上がった。

その目を見た途端すくみ上がって、私はそれ以上何も言えなくなった。

な……なんなんだろう?
私、何か気にさわる事言った?
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

処理中です...