【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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招かざる訪問者

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「すげーな。それ全部プレゼントか?」

すぐに体勢を持ち直した私は、ホッとため息をつきながら机の上にプレゼントの箱をそっと置く。
「う、うん」

私は、平常心を装いながらも、内心凄く緊張していた。 
それもそのはず。
ずっとディオンを避けに避け続けていて、こうして2人っきりになるのは、ディオンが目覚めた日ぶりだからだ。

「ふぅん……」
ディオンは、何故なぜかじっとそのプレゼントを見つめている。

「な、何か用?」
目を合わせずに聞いてみるが、返事はない。
気になって横目でディオンを確認すると、迷っているような、でも戸惑っているような……そんな表情がこの瞳に映り込んだ。

どうかしたのかな。

「ディオン……?」
私は首を傾げて質問した。

「やっぱ、なんでもねーわ」
「え?」


どこかそわそわしていて、なんでもないようには見えないんだけど、と思った時、背中側でノック音がした。

「シエルー、ご飯行こー」
それは、メイの声だった。
咄嗟とっさに私は、「う、うん!ちょっと待って」と答える。

ドアから眉をひそめるディオンに視線を戻すと、ディオンはグイっとあごでドア側を差した。

「いい、行け」
「でも……」

こんな風に会いに来る事なんてほとんどない。
だから、何か話があったんじゃ……
例えば、私がずっと避け気味だった事についてとか……

「あいつが待ってんだろ」
「そうだけど……。あっ、じゃあ先行ってもらうよ」
私も、そろそろディオンに色々と話さないと駄目だと思っていた頃だし。

ドア側に振り返ろうとすると「いや、いい」と、引き止められる。

え?いいって……

全然いいって顔してないじゃん!
どうしたの?ディオンらしくない……


「何かあるから、ここに来たんでしょ?」
と、眉を寄せて問いかける。

「まぁ、な……」
ディオンの様子を見ると、やっぱり違和感がある。

「なぁ、お前って、なんで俺の事……」



その時、ディオンの言葉をさえぎるようにメイの大きな声が響いた。

「シエルー?まだー?」
その声を聞いたディオンは、手で払いのけるような仕草をして、もう片方の手で顔を覆った。

「もういい、早く行け」
「わ、分かった」
これ以上メイを待たすのも悪いし……

「私に何か言いたい事があって来たんだったら、夜でもいいから来て。待ってるから」
そう言って背を向けようとしたとき「待て」と言われる。

「何よ、『行け』って言ったり『待て』って言ったり……」と、困惑しながら振り返ると、黒い何かがこちらに向かって飛んで来て、思わずそれをキャッチした。


自分の手の中を見ると、そこには手の平にギリギリ収まるサイズの黒い箱があった。

「え……?何、これ……」
「やる」
ディオンは出窓の外に顔を向け、口元を覆ったまま、ぶっきらぼうにそう言った。


……えっ……

これって、まさか……
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