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招かざる訪問者
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…………
……
サオトメ・ロレンツォ目線――
今日は進級試験日。
幸い、体調は万全だった。
そのおかげで無事に試験に合格し、最後のクラスであるSクラスへの進級が決まった。
シエルちゃんはまた飛び級し、ジョウガサキも今回は普通に合格。友人たちも多くが合格していた。
僕は上機嫌で帰っている途中、ふとアランの後ろを歩くソフィアの姿が目に入った。
その瞬間、僕は思わず目をパチクリとさせた。
人があまり通らない建物の裏に入っていく2人に、胸の奥がザワつく。
一体何をするのか気になり、静かに後をついて行く。
すると、曲がり角の手前で、思いもよらない発言が耳に飛び込んできた。
「サオトメに余計な事してたんはお前やったんやな。……おかしいと思ってん。緊張しぃでもないあいつが、試験の日だけ体調崩すって言うから」
その言葉に、ドクンと心臓が嫌な音を立てた。
ジョウガサキは、何を言ってんだ?
「お前、自分が何やってんのか分かってんのか?…………おい、何か言ったらどうや」
女性には絶対的に優しいジョウガサキが放つ、荒っぽい台詞の後に、グズっと鼻をすする音が聞こえてドキっとする。
建物の陰からそっと覗くと、ジョウガサキの背中の向こう側に、目をこすって泣いているソフィアが映った。
すぐに止めさそうと足を一歩踏み出した、その瞬間――
「ごめんなさい……」
というソフィアの声が聞こえて、思わず身が固まった。
「私は……ただサオトメ様と一緒にいたくて……先に、卒業してほしくなくて……」
……えっ?
もしかして、今、やったことを認めた……?
という事は、僕が毎年体を壊していたのは――ソフィアが原因だったってこと!?
「はぁ!?お前、そんな理由で……サオトメの人生なんやと思ってんねん!」
ジョウガサキが建物の壁をドンと叩きつける。
「お前のせいで、サオトメの人生を何年棒に振ってると思ってるんや!自分勝手なんもええ加減にせぇや!」
ジョウガサキが昨日、突然ソフィアからもらったお菓子を燃やした理由が、今やっとはっきりした。
こんな所までソフィアを呼び出して……僕の為にあんなに目くじらまで立てて……
やっぱり、本当に呆れる程いい奴だ。
でも……僕はこんな事を望んでない。
「そんな事、あなたに言われなくても分かってます!」
「じゃあなんでやねん!お前は、好きな奴の幸せも考えられへんのかいな!」
「うっ……分かってます……」
ソフィアはきっと、僕に依存してるんだと思う。
学園内には、顔も見れないし会えないからと、実の子なのに両親から見放されている子供が多い。ソフィアもそんなうちの1人だった。
だからこの学園には、反抗的な態度を取ったり、精神的に不安定だったり、誰かに依存するような人が多い。
ソフィアはきっと、小さい頃から時間を共にしている僕に、家族のような存在を見出して依存してしまっているんだと思う。過去に、そう感じる事は何度かあったし。
だからこんな事を……
「ほら管理事務局にいくで。やってしまったもんは、いくらあがいても取り消されへん。やからせめてサオトメにした罪だけは、今からでも償ってもらう」
ジョウガサキが、愕然と俯《うつむ》くソフィアの二の腕を掴んだ。
今、僕が出ない方がいいと思っていた。
ソフィアが、今の自分を僕に見られたくないような気がしたから。
だからこのまま僕は出ずに、明日から、何も知らなかったように接していけばいいと思った。
でも、ソフィアが塔に入れられるのなら、話は別だ。
連れて行かれそうになるソフィアをただ見ているなんて、出来ない。
「待って!」
そう叫ぶと、2人の驚いた顔が僕に向けられた。
……
サオトメ・ロレンツォ目線――
今日は進級試験日。
幸い、体調は万全だった。
そのおかげで無事に試験に合格し、最後のクラスであるSクラスへの進級が決まった。
シエルちゃんはまた飛び級し、ジョウガサキも今回は普通に合格。友人たちも多くが合格していた。
僕は上機嫌で帰っている途中、ふとアランの後ろを歩くソフィアの姿が目に入った。
その瞬間、僕は思わず目をパチクリとさせた。
人があまり通らない建物の裏に入っていく2人に、胸の奥がザワつく。
一体何をするのか気になり、静かに後をついて行く。
すると、曲がり角の手前で、思いもよらない発言が耳に飛び込んできた。
「サオトメに余計な事してたんはお前やったんやな。……おかしいと思ってん。緊張しぃでもないあいつが、試験の日だけ体調崩すって言うから」
その言葉に、ドクンと心臓が嫌な音を立てた。
ジョウガサキは、何を言ってんだ?
「お前、自分が何やってんのか分かってんのか?…………おい、何か言ったらどうや」
女性には絶対的に優しいジョウガサキが放つ、荒っぽい台詞の後に、グズっと鼻をすする音が聞こえてドキっとする。
建物の陰からそっと覗くと、ジョウガサキの背中の向こう側に、目をこすって泣いているソフィアが映った。
すぐに止めさそうと足を一歩踏み出した、その瞬間――
「ごめんなさい……」
というソフィアの声が聞こえて、思わず身が固まった。
「私は……ただサオトメ様と一緒にいたくて……先に、卒業してほしくなくて……」
……えっ?
もしかして、今、やったことを認めた……?
という事は、僕が毎年体を壊していたのは――ソフィアが原因だったってこと!?
「はぁ!?お前、そんな理由で……サオトメの人生なんやと思ってんねん!」
ジョウガサキが建物の壁をドンと叩きつける。
「お前のせいで、サオトメの人生を何年棒に振ってると思ってるんや!自分勝手なんもええ加減にせぇや!」
ジョウガサキが昨日、突然ソフィアからもらったお菓子を燃やした理由が、今やっとはっきりした。
こんな所までソフィアを呼び出して……僕の為にあんなに目くじらまで立てて……
やっぱり、本当に呆れる程いい奴だ。
でも……僕はこんな事を望んでない。
「そんな事、あなたに言われなくても分かってます!」
「じゃあなんでやねん!お前は、好きな奴の幸せも考えられへんのかいな!」
「うっ……分かってます……」
ソフィアはきっと、僕に依存してるんだと思う。
学園内には、顔も見れないし会えないからと、実の子なのに両親から見放されている子供が多い。ソフィアもそんなうちの1人だった。
だからこの学園には、反抗的な態度を取ったり、精神的に不安定だったり、誰かに依存するような人が多い。
ソフィアはきっと、小さい頃から時間を共にしている僕に、家族のような存在を見出して依存してしまっているんだと思う。過去に、そう感じる事は何度かあったし。
だからこんな事を……
「ほら管理事務局にいくで。やってしまったもんは、いくらあがいても取り消されへん。やからせめてサオトメにした罪だけは、今からでも償ってもらう」
ジョウガサキが、愕然と俯《うつむ》くソフィアの二の腕を掴んだ。
今、僕が出ない方がいいと思っていた。
ソフィアが、今の自分を僕に見られたくないような気がしたから。
だからこのまま僕は出ずに、明日から、何も知らなかったように接していけばいいと思った。
でも、ソフィアが塔に入れられるのなら、話は別だ。
連れて行かれそうになるソフィアをただ見ているなんて、出来ない。
「待って!」
そう叫ぶと、2人の驚いた顔が僕に向けられた。
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