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招かざる訪問者
12
しおりを挟むジョウガサキは、すっと僕のズボンのポケットを指さした。
「え?」
そう言われて、さっきポケット入れたばかりの彼女からの応援クッキーを取り出した。
すると、ジョウガサキの目がみるみると大きくなっていった。
「サオトメ……お前、これどこで手に入れてん。えらい可愛らしいけど、まさか誰かに貰ったんか?」
「え?そうだけど……」
「それ、食べるんちゃうやろうな?」
「食べるよ。当たり前だろ。せっかく僕のために作ってくれた物なんだから」
「食べんな」
「何言ってるん……」
「ええから!そんなん食べたらアカン!」
血相を変えたジョウガサキは、いきなり僕の手から応援クッキーを取り上げた。
「おい、何するんだよ!返せ!」
驚き目を見開き、取り上げられたクッキーに手を伸ばしたその瞬間、クッキーは目の前で勢いよく燃え上がり、チリのようなものがパラっと廊下に落ちた。
「…………は?はぁーー!?ジョウガサキ、何しててくれるんだよ!」
地面に落ちた黒いカケラを見ては、怒りがわなわなと湧き上がる。
毎年健気に応援してくれているソフィアの純粋な気持ちを、無下にされたことが、信じられないくらいムカついた。
でも顔を上げると、なぜか僕より苛立った顔をしているジョウガサキが目に入り、訳が分からないと思った。
なんなんだ……
なんで僕よりも怒ってるんだ?
とりあえず、最近は実はいい奴だと思ってきたけど、それは完全に勘違いだったみたいだ。
僕の中で納まりきらない怒りが渦巻いた。
…………
……
ディオン目線――
「いねぇ……」
時計台のてっぺんに足を降ろし、夜の色に染まるこの学園を見下ろす。
どれだけ探しても、あの時以来、一度もあの魔力は見つからない。
もう学園には居ないのか?
「相変わらず神隠しみてぇだな」
俺は、あのパーティ会場で俺に酷似した魔力を見つけてから、ずっとその魔力元を追っている。
だが、何か特別な魔法でも使っているのか、姿を見ることすら叶わない。
この俺が探し続けているというのに。
この現象は、今回が初めてではない。
最初に感じたのは、ここで特別講師として正式に働き始めて数か月経った頃だった。
それ以来、同じような現象が何度も学園内で繰り返されている。
ほんの僅かに残る、俺と全く同じ魔力。
気持ち悪くて後を追う日々。
でも、いくら探しても魔力の主は見つからず、すぐにその気配は消えてしまう。
やがて、その魔力は一切感じられなくなった――そう思った矢先、学園外で再び感じた。
俺はついに、その正体不明の魔力を追うために講師の職を辞め、国籍まで変えて世界を回った。
でも、この俺がそこまでしても全く尻尾をつかむことは出来なかった。
世界は広く、場所が違うのか、魔力を感じない期間がどんどん長くなっていった。
気がつけば2年も経っていた。
そこでさすがにもう無理だと諦め、この学園に戻ってきたところ、ちょうどシエルが打たれそうになっていた時だった、というわけだ。
記憶が曖昧だが、今の半分くらいの背丈だったシエルに会ったのは、もっと前の何度かやっていた臨時特別講師の時だったと思う。
魔力には個性がある。
全く同じ魔力なんて絶対にありえない。
なのに、この魔力はどっからどう見ても俺のもので間違いない。
そう考えると、いつも頭に有り得ない考えが浮かんでしまう。
――もう一人俺がいるんじゃないか、と。
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