【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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招かざる訪問者

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「その理由はですね、かなり昔にさかのぼります。
国が一部の学園生徒を戦争に参戦させると決めて間もない頃、生徒の反乱や頻繁ひんぱんな殺し合いが起きたんです。そのせいで、出陣前には生徒がボロボロになり、しかも生徒数も減ってからのスタート。その年の戦況は言うまでもなく、ひどいものでした。
反抗的な態度は特に年齢が低い生徒たちに強く出たため、参戦しない下級クラスには不必要な不安を与えないよう、戦争が始まる直前に参戦する生徒だけに告知するようになったんです」

「なるほどな。告知を直前にしているのは、反乱対策という訳か」

「はい、そうでございます。反乱には準備時間が必要ですから、あえて生徒にその時間を与えないようにしているんです。とはいえ、そのせいで生徒たちは本格的な実践訓練を受ける期間が短くなり、最後は急ピッチで訓練することになりますが……学園長は、それでも直前に伝える方が良いと判断しております」


「そうか」
「カミヅキ様。そんなお話より、もうお食事はお済みですか?」
「いや」
「それはよかったです。今日はこの日のために一流のシェフを学園にお招きしております……そのシェフは、実は私のおいなのですが……」

教頭が自慢げに話しだした頃、テラスに出たシエルを追いかける転校生の姿が目に入った。


あいつ……

イラつく気持ちで、手にしていたワインをグイっと一気に飲み干す。


そして勢いよくウエイターのトレーに置くと、「ああ~っ……せっかくのヴィンテージワインを一気飲みだなんて……」という声が背後から聞こえる。

追いかけようと一歩足を前に踏み出した瞬間、ふとある事が浮かんで、俺は動きを止めた。

それは、最近あいつが俺の事を避けている、という事だ。


さっきだって、思いっきり目をらしやがった。


最初は気のせいかと思ってたが、そうではないようだ。
頻繁ひんぱんらされる目に、どこかそっけない態度の数々。
理由を聞いても、逃げるようににごされる。

これを避けていると言わずして、何と言うのだろうか。
思い当たることなんてねぇのに……

いや、ねぇのか?本当に?


次々に浮かんでくる、自分の過去の行い。


首をしめたり、屋根から突き落としたり、押し倒したり……
そんな過去の自分に、思わず目元を手でおおった。

「はぁー……」

そのせいか?
そのせいでシエルは……

確かに、過去の俺はシエルにとがめられてもおかしくない事を何度もしてきた。

でも、それだとタイミング的におかしい。
今回おかしくなったのは、俺の目が覚めてからだ。


もしかして……がけでやったキスか?
それとも、出発前日にシエルが想う相手を殺そうとした事か?


シエルが俺へ向ける態度を思い出すと、胸が痛くなり、そっと胸元を見た。

はぁー、俺がこんな気持ちを持つなんてな。

生涯無縁しょうがいむえんの感情だと思っていたのに……


本気で馬鹿馬鹿バカバカしくて全身がかゆくなる思いだが、思い返せば呆れるほどに全部しっくりくる。
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