【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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招かざる訪問者

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その言葉と、アランの真っすぐな目に、胸が熱くなる。

でも、私は……

「ご……」
「シエルちゃんが、あの講師が好きなんは知ってる」
その言葉にビックリして、伏せた目を上げた。

「それでも、諦められへん!ほんまに、俺やとアカンか?」
そう言われて、すぐに否定できない自分がいた。


それは、今ディオンが犯人だと思っているから?

アランがとってもいい人で、一緒にいると楽しいから?

それとも、命をかけて……助けてくれたから?


アランの熱意に、眉が寄る。

「あんな奴より、絶対に幸せにしたる!」
そう言って出された手を見て、ひどく戸惑った。



アランの宣言通り、私はアランと一緒になら、幸せになれる気がする。
笑顔の絶えない未来が容易に見える。


でも……
私は、ディオンが私を殺した犯人だという疑いがあっても、やっぱりディオン以外に考えられない……


アランが真剣だからこそ、私はその気持ちには応えれない。



「ごめん……なさい……」

私も、それほどにディオンが好きだから……


ディオン目線――

仕事を終えた俺は、共有の講師室から見える下級クラス棟の方から賑やかな音が聞こえてくることに気が付いた。

「なんだ。下級クラス棟が騒がしいな」とつぶくと、唯一ゆいいつ講師室に残っていた下級クラスの講師が答えた。

「下級クラス用のパーティですよ」
「下級クラス用のパーティ……?」
「ほら、今やってる戦勝パーティのカモフラージュの」
「ああ」

そうか、今戦勝パーティ中か。

「カミヅキ講師は行かれないのですか?」
「ああ」

パーティなんて面倒せぇ。


俺が共有の講師室から出ようとすると、「今回はすごく美味しいお酒が多いらしいですよ。なんでも、ヴィンテージもののワインがあるとか」と言ってくる。


それを聞いて、ふとシエルのことが頭をよぎった。

大丈夫だろうな……?


…………

……


結局パーティ会場に来てしまった俺は、俺の横に引っ付いてペチャクチャと喋る背の低い教頭を見下ろす。

「いやぁ~まさかカミヅキ様が来られるだなんて。それでしたら、もっと他も豪華なものを用意しておけばよかったです。
ちなみにこちら、オールドヴィンテージワインでして、とても味わい深いので、ぜひカミヅキ様にも味わって頂きたいです」
と、教頭は俺の手にワイングラスを渡して来た。

「なぁ」
「はい。どうされましたか?」
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