【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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招かざる訪問者

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そして、ディオンの反応を見逃さないように、まばたきを最小限にした。

でも、予想外な事に、ディオンは私にキョトンとした顔を向けた。

「世界線?」
「うん」
あれ?意外と普通の反応。

「さっきから変な質問ばっかだな。俺が寝てる間になんかあったのか?」
疑いの目で覗き込まれて、ドキっと心臓が跳ねる。

「そ、そんなんじゃない」
「じゃあなんだよ。訳の分からねぇ事ばっか聞いてきて。何を隠してんだ?」
そう言って、すごむように私のほほを親指と人差し指で挟んできた。

「ぴゃっ」

ディオンは、私の質問に全く動揺や驚きを見せなかった。

やっぱり……違う気がする。
ディオンじゃない?私の勘違い?

こんなに、姿も声も似ているのに……?


私は、頬を掴《つか》むディオンの手を取り、離した。

「止めてよ。本当に……気になってるだけなんだから!」
「ふぅん……」
ディオンの言葉を最後に、小さな沈黙が流れた。


その沈黙を破るように、ディオンは口を開いた。

「世界線って、相対性理論で四次元空間にあるって言われるやつだっけ?」


「え……。う、うん」
「世界線は、同じ世界の中での別の時間や出来事の流れだ。
平行世界は、似た世界だが別の世界だ。どいはも行き来は理論上は可能とされている。でも長年研究はされているけど、実際に成功した奴はまだいないはずだ。俺の記憶が正しければな」

す……すごいっ!詳しい!
かなりマニアックな内容のはずなのに!さすが特別講師。
もう、初めっから書庫に行かずにディオンに直接聞けばよかったと思う程の知識量だわ。ディオンが犯人でなければ、だけど……


「そうなの。まだ実現は出来ていないらしいんだけど……」
「それを俺が出来るかって?」
その言葉に何度もうなづいた。

もうこの感じ、ディオンは白に見える。
普通なら『まさかバレてるのか!?』って多少の動揺を見せるはずだし。


いや、でも実はすごく演技派なのかも……って、そんなわけないか。過去のディオンを思い返すとそういうのではない気がする。

でも、本当はそれさえも演技だったり……
疑いだすと、やっぱり止まらない。
この疑心暗鬼ぎしんあんきに終わりが見えない。
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