【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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招かざる訪問者

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「ちょっと前から」
「えぇ!?」
全く気付かなかった。

「なのに、お前全然気付かねぇし」
「……ちょっと考えごとをしてて……」
「ふぅん?」
片眉を上げたディオンは、ダルそうに私の隣に座ってくるから心臓が跳ねた。

「ってか、髪真っ白だな」
私は、目覚めた時から髪が真っ白だ。

真っ白だと、ディオンのマネみたいで恥ずかしいから、髪色を変える魔法を何度かかけてみたけど……爆発したような髪になっただけで上手くいかなかった。
魔力が高くても、コントロールりょくがまだまだなんだろう。


「うん。そうなの。なんかディオンとおそろいにしたみたいで困るよね?」
こんな髪色、学園には今のところ私とディオンしかいないし……

私は自分の髪先を掴んで、困ったように笑った。

「別に」
てっきり否定的な言葉を言われると思ったのに、許容されてしまって少し驚く。

「そ……そっか。それより体、大丈夫なの?」
「別に。なんともねぇ。それより寝すぎてだりぃ」

ディオンは夕焼けに染まる空を見上げ、大きなあくびをしてからダルそうに首を右左に傾げた。

首を動かすたびに揺れる長い髪を見て、私の中の直感さんがメガホンを持って『犯人はディオンだー!』と叫び始める。


沈んでいると、「何日だ」と言われてビクっとしてしまう。

「えっ?」
「俺はどれくらい寝てたんだ?」

「えっと……」
私は手をパーにして指折り数える。
「5日……かな?」

「ふぅん。そりゃだりーわ。にしてもなんだったんだ?ドア前の警備員や女たちは。監視されてるみてぇでウザくて逃げて来た」
「あー……ディオンが寝てる間に、沢山の女子達がお見舞いに押し寄せたらしくて、だから……」
「ふぅん。くだらねーな。見舞いで元気になるわけねぇだろ」
ピシャリと言われた言葉に、自分まで否定された気がして小さなショックを受ける。私もその女子達の中に居たから。

「気持ちの問題でしょ」
「要らねぇよ」

なんでそんな酷い事言うのよ、と思ったけど、ディオンが沢山の女子達に囲まれて喜んでいる姿を想像すると……それはそれで凄く複雑な気持ちになりそうな気がした。

「みんな心配してるんだよ」
一部は興味本位だろうけど。


私の言葉に、口を歪めるディオンを見て、今だと思って口を開いた。

「ディオン」
「ん?」
「何度も助けてくれてありがとう。約束……もう守ってくれないと思ってた」

私の言葉に、目を大きくしたディオンは、イラついた顔に変わる。
「思い出した」
「えっ!?」
「お前、本っ当に馬鹿だな!!」
えぇ!?いきなり何!?

「元々馬鹿だと思ってたけど、あそこまでだとは思わなかった」
「な、なんの話……」
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