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俺は、お前が……
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「離せ!」
そう叫んで瞬間移動しようとしたが、何故か発動しない。
それどころか、指先さえも動かせない。
「……っは!?なんだこれ!?」
「やっぱり気が付いてなかったんだね。僕が、陰ながら魔法をかけていた事を……」
「えっ!?」
「やっぱり、女に気を取られていたせいかな?」
と話すヴァイスは、自慢げにシエルの髪をすくった。
「汚ねぇ手で触んな!!」
「だ……誰……?ディオンに何をしたの?」
俺とヴァイスのやり取りを聞いていたシエルは、震えた声で聞く。
「僕はヴァイス」
「ヴァイス……?」
「リヴァーバル帝国では有名なんだけどね。知らないのかい?」
「リヴァーバル……帝国……!?」
シエルは驚いたように周りを見渡した。
「ディオンには、ちょっとした魔法をかけただけだよ」
シエルはリヴァーバル帝国の鎧を着た兵士や魔法使いを目にし、信じられないという表情をヴァイスに向けた。
その表情は、瞬く間に怒りの炎に変わったのがハッキリと見て取れた。
「……ローレンやアランやメイたちを傷つけたのは、あなたね!」
そう言うと、即座にヴァイスに手の平を向けた。
「おい待……」
俺が止める間もない程に早く、シエルはヴァイスに向かって魔法を放った。
ボンッと爆発音が鳴ってヴァイスたちの周りを煙がを覆いつくす。
次々と止むことのない爆発音に、辺り一帯に煙が立ち込める。
「そいつはお前が敵う相手じゃない!」
と叫んでみるが、俺の声はこの大音量にかき消されているようだ。
「シエル!」
ヴァイスは生粋の女好きだ。
さっきの感じからして、こんな事をしてもシエルを殺すなんて事はないとは思うが……
「……みんな、あなたのせいで……っ!!」
爆発音と爆発音との隙間に、そんな言葉が聞こえた。
きっと、やられた仲間のための敵討ちでもするつもりなんだろう。
今のシエルでは到底かなわない。そんな事は今のシエルでも分かるはずなのに。
強烈な煙でのせいで、今の状況すら全く分からない。
「くそっ!」
この動けなくなる魔法さえ解ければ……
手が動かせない状態で、この高度な魔法を解くのはかなりの時間がかかりそうだ。
手が使えたら一瞬なのに!
まるで解き方を知っている知恵の輪を、赤子の手で解いているかのようだ。
簡単に魔法を解除されないよう、ヴァイスはあえてこの魔法を使ったんだろう。
本当に趣味が悪い。趣味が悪いのはその恰好だけにしろよ。
そんな事を考えていた時、シエルの叫び声が俺の鼓膜を貫いた。
「きゃぁーー!!なに、これ……」
その時、風が煙を一掃し、姿を現したのは――
王宮ベッドの4本柱のうちの2本に、植物の蔓のようなもので張り付けられたシエルと、そんなシエルに手をかざしているヴァイスだった。
そう叫んで瞬間移動しようとしたが、何故か発動しない。
それどころか、指先さえも動かせない。
「……っは!?なんだこれ!?」
「やっぱり気が付いてなかったんだね。僕が、陰ながら魔法をかけていた事を……」
「えっ!?」
「やっぱり、女に気を取られていたせいかな?」
と話すヴァイスは、自慢げにシエルの髪をすくった。
「汚ねぇ手で触んな!!」
「だ……誰……?ディオンに何をしたの?」
俺とヴァイスのやり取りを聞いていたシエルは、震えた声で聞く。
「僕はヴァイス」
「ヴァイス……?」
「リヴァーバル帝国では有名なんだけどね。知らないのかい?」
「リヴァーバル……帝国……!?」
シエルは驚いたように周りを見渡した。
「ディオンには、ちょっとした魔法をかけただけだよ」
シエルはリヴァーバル帝国の鎧を着た兵士や魔法使いを目にし、信じられないという表情をヴァイスに向けた。
その表情は、瞬く間に怒りの炎に変わったのがハッキリと見て取れた。
「……ローレンやアランやメイたちを傷つけたのは、あなたね!」
そう言うと、即座にヴァイスに手の平を向けた。
「おい待……」
俺が止める間もない程に早く、シエルはヴァイスに向かって魔法を放った。
ボンッと爆発音が鳴ってヴァイスたちの周りを煙がを覆いつくす。
次々と止むことのない爆発音に、辺り一帯に煙が立ち込める。
「そいつはお前が敵う相手じゃない!」
と叫んでみるが、俺の声はこの大音量にかき消されているようだ。
「シエル!」
ヴァイスは生粋の女好きだ。
さっきの感じからして、こんな事をしてもシエルを殺すなんて事はないとは思うが……
「……みんな、あなたのせいで……っ!!」
爆発音と爆発音との隙間に、そんな言葉が聞こえた。
きっと、やられた仲間のための敵討ちでもするつもりなんだろう。
今のシエルでは到底かなわない。そんな事は今のシエルでも分かるはずなのに。
強烈な煙でのせいで、今の状況すら全く分からない。
「くそっ!」
この動けなくなる魔法さえ解ければ……
手が動かせない状態で、この高度な魔法を解くのはかなりの時間がかかりそうだ。
手が使えたら一瞬なのに!
まるで解き方を知っている知恵の輪を、赤子の手で解いているかのようだ。
簡単に魔法を解除されないよう、ヴァイスはあえてこの魔法を使ったんだろう。
本当に趣味が悪い。趣味が悪いのはその恰好だけにしろよ。
そんな事を考えていた時、シエルの叫び声が俺の鼓膜を貫いた。
「きゃぁーー!!なに、これ……」
その時、風が煙を一掃し、姿を現したのは――
王宮ベッドの4本柱のうちの2本に、植物の蔓のようなもので張り付けられたシエルと、そんなシエルに手をかざしているヴァイスだった。
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