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俺は、お前が……
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しおりを挟む周りにいた兵士からの総攻撃が飛んで来た。
でも、シールドを張っているお蔭で痛くも痒くもない。
「何っ……私達の攻撃が効かない!?」
俺が驚きを隠せない兵士に「うざい」と手の平を向けると、王宮ベッドの中から声が飛んできた。
「待って」
その声に、再び王宮ベッドの中に目を向ける。
すると、ゆったりと横たわる人物が目に映った。
その姿を瞳に捉えた瞬間、さっきの予感が正しかったんだと、ハッキリと悟った。
「もう攻撃させないから、僕の家来たちを殺さないでくれる?」
その人物の言葉に驚く兵士たち。
俺はシエルを泣かせ、殺そうとした目の前の人物に殺意を渦巻かせながら口を開けた。
「やっぱお前か。どうして戦場にいる?……ヴァイス」
王宮ベッドの中にいた人物はゆっくりと起き上がると、クスっと静かに笑みを浮かべた。
奴の名はヴァイス・モルガン。
どうでもいいが、甘いマスクの持ち主だと言われている。
見た目は男か女かも分からないような身なりだが、れっきとした男だ。
年齢は俺より年上だったと思う。
ヴァイスは片膝を立て、鬱陶しい程に長く白い髪をなびかせた。
どこかの民族衣装なのか、真っ白な布切れが沢山重なったようなワンピースを露わにする。
まるでエルフのような恰好に、相変わらず趣味が悪いと思った。
「それはこっちの台詞だよ。久しぶりだね、カミヅキ」
名前を呼ばれた事にハッとしてカメラの位置を確認する。
でもカメラはかなり遠く、ここは死角だと知る。
「なんだ、あれを気にしているのかい?ここは死角だから安心して」
心の中を読まれて、不愉快な気持ちで口を歪める。
「なるほどな。そういう事か。リヴァーヴァルがあの後も勢力を保ち続けたのは、てめぇのせいだったんだな……」
ヴァイスがリヴァーヴァルと関係があったのは知っていたが……
ヴァイスの後ろ側に居た兵士が、ベッドの横に出て来て「失礼致します。モルガン様のお知り合いでございますか?」と聞いている。
「ああ、旧友だよ」
その言葉に慌てふためく兵士たち。
「は? 何言ってんだ。お前と友人になった覚えなんてねぇよ」
「相変わらず淋しい事言うね。昔、共に魔法について語り合った仲じゃないか」
「それはお前が聞いて来た質問に答えただけだろ」
「そう……なんだ。残念。僕はやっと仲良くなれたと思って嬉しかったのに……」
悲し気に項垂れる様子を見て、こいつは信用できない奴だという事を思い出した。
何が信用できないのか、どうしてそう思うのか、言葉にするのは難しいが……
「じゃあ今から仲良くしようよ。そうだ!そうしよう」
ポンと手を叩き、さぞかしいい案を思いついたかのように話を進めていく。
コロコロ変わる表情は天真爛漫に見えるが……、これはこいつの本性じゃないと俺は思っている。
いつも腹の中が全く見えない感じに、どこか警戒してしまう。
「しねぇよ……」
「えー、僕とカミヅキが組めば……」
そう言うと怪し気に笑みを深めて続けた。
「……世界征服だって出来るよ?」
こいつの本性は、多分こっちなんだろうと俺は思う。
「だって君と僕は……世界で認められた、たった二人しかいない大魔法使いなんだから」
奴は、最後に音符マークでも付きそうなほどに愉快に言ってのけた。
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