【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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俺は、お前が……

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「本当はお前さんも分かってるはずじゃよ。でも……生い立ちのせいかの……?上手く認めれない感じじゃな。あまりおちおちしていると、後から来る自分に奪い去られてしまうぞい」
後から来る自分……?

「奪い去られた後は、もうお前さんでは手の届かない場所に連れて行かれてしまう。じゃから、十分に気を引き締めた方がいい」


ハッキリと答えを教えない婆に、趣味が悪いと思った。

そういうスタンスなのか?
答えは自分で見つけろって?

『後から来る自分』……
自分に奪い去られる……

何かの例えなのか……?

「くっ……」
解決するどころか、逆に分かんねぇ事が増えてしまったじゃねぇか!

俺はイラついて前髪を強くかきあげた。




シエルが戦地に行って数日が経った。
その間、不安は日を追うごとに募っていき、戦場での様子を想像するたびに胸が締めつけられるようだった。


そんなある日――

今日も落ち着かない俺は、椅子に深く腰かけ、悩まし気に頭に手を当てて呟く。

「こんなの、いつまで続くんだ……?」
戦争が終わるまで続くのか?
これが呪いじゃないとしたら、これほどシエルに執着する理由はなんなのか……

未知の自分に戸惑とまどい、嫌悪感けんおかんが湧いて来る。


シエルがくそ野郎をかばうまでは、シエルに対しての気持ちは、こんな胸糞悪いものじゃなかった……

全部、あの日を境に変わってしまった。


「はー……」
深いため息をついた瞬間、突然、胸がひどくザワついた。


「っ!!まさか……」
シエルの身に何かが……っ!

そんな考えが一瞬浮かんでから、居ても立っても居られなり、生きた心地すらしなくなった。

俺は予言者じゃない。
でも、素質があるのか、こういう予感は何故か当たる事が多かった。


不安に押しつぶされそうになって頭を押さえ、ため息をつく。

すると――
次の瞬間、目の前には広大な砂漠のような場所が広がっていた。
遠くで戦いが繰り広げられる様子が映る。


「おい。マジかよ……」

結局俺は、また無意識のうちに動いてしまったようだ。
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