【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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裂かれた大地

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あんな魔力のかたまりを、何の躊躇ためらいもなく打ち返した事に、驚きが隠せない。


「……っ!」

打ち返した球は敵陣に落ちて、突風がこちら側にも吹きつけた。

砂埃すなぼこりが襲って来る中、手で目元をかばいながら男子生徒を見上げると、黒い髪もローブもパタパタと揺れていた。


「死ぬ気かよ」

男子生徒がそう言うと、ゆっくりと振り返り始めた。
少しづつ見えて来るその顔から、私は1秒たりとも目が離せなかった。


ゆっくりと、その顔がついにあらわになり、私の瞳に映り込んだ。

切れ長の目、すっと通った鼻筋――バランスの取れた顔立ちは驚くほど美しい。

その姿は、私の知るディオンにそっくりだった。

でも髪色が違うし、どう見ても私と同じくらいの年齢にしか見えないほどに幼い……はっ!まさか!


ディオンは年齢と髪色を変えて、生徒のフリをして参戦したってこと!?

そんな事したって、魔力のせいでディオンだとすぐにバレるのに……と思った瞬間、あることに気づいた。

それは、ディオンらしき人物から、という事。

魔力が減りすぎて、もう魔力を目視では見れない。
けど、大きな魔力ならまだ感じる事は出来ている。
なのに……目の前の人物は、まるで魔法使い様ではないみたいに魔力を感じない。

一体どうなっているのか……


ディオンにとても似た謎の男子生徒は、風でなびく前髪を鬱陶うっとうしそうにかき上げてつぶいた。

「あー、絶対行かねぇって、思ってたのにな……」
やっぱり、何度聞いてもその声は、ディオンそのもの。


長いまつげに守られているかのような黒い瞳が、くやし気に私の体を隅々すみずみと確認する。
まるで私の無事を確かめるように。

一通り確認が終わったのか、ふいっと顔をらすと、大きなため息をつかれる。


「あなたは、ディ……んん!?」
ディオンなの?と聞こうとしたとき、突然目の前に現れたテープで口を塞がれた。

「国の奴らがあっから見てる」
ディオンらしき人物が、あごで空をさした。
上空を見上げると、何かが空中に浮いていた。
目を凝らすと、それは魔法会の時に浮かんでいる、あのカメラのように見えた。

「いい趣味してるよな。マジで言葉の通り高みの見物だぜ」

ディオンだ……
やっぱり、ディオンだっ!!

もしかして、私を助けに来てくれたの……?
もう、絶対来ないと思っていたのに……

あんなに、ディオンは来なくて良かったと思っていたのに、来てくれた事が凄く嬉しくて涙が浮かんで来てしまう。
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