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裂かれた大地
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しおりを挟む驚き目を見開いた時、アランらしき背中が見えた。
「アホか!」
そんな声が聞こえた瞬間、アランが目の前から消えた。
そして、あの光の球も消えていた。
息を止めたまま恐る恐る首を振ると、空高くに飛んで行く光の球と、地面が削られたような大きな筋が映った。
その筋は、何か引きずられたような跡に見えて、目で辿っていくと――
倒れているアランにぶつかった。
「……ア……ラン……?」
その姿を見た瞬間から、心臓がバクバクと不整脈を打つ。
信じられない気持ちでゆっくりと立ち上がり、アランの名前を呼びながら近づいていく。
その間、アランはピクリとも動かない。
いつも埃一つ無いピカピカの恰好をしていたアランは、今はひどくボロボロだった。
アランの傍で足を止めて見下ろす。
アランは軽く口を開けたまま、寝ているように目を閉じていた。
その瞬間、嫌な予感が私を支配した。
「アラン……?」
嘘……だよね?
「ねぇ……アラン……っ」
どうせ冗談やで、って笑って起き上がるんでしょ?ねぇ……
「なんで何も言ってくれないの?!ねぇ……なんで……っ!」
ローレンだけじゃなく、アランまで……?
私は、地面に倒れたままのアランの横に膝をつき、回復魔法を使うという事も忘れて泣き叫んだ。
もう……
頭が、真っ白だ……
「……んで……」
その時、苦し気な叫び声がたくさん耳に飛び込んできた。
目を向けると、凄い勢いで歩兵がやられて行く様子が映った。
空陣が完全に崩れたせいか、アランが外れたせいかは定かではないが、私が関与していることは間違いないだろう。
地獄絵図のような光景に、現実を拒否したくなる。
こんなの、夢だ……
でも、これは現実で……
「……全部、私のせいだ……」
そう呟いた時、まるでとどめを刺すかのように、信じられないほど巨大な光の球が敵陣の上に現れた。
その瞬間、あの魔力の持ち主が、ついに戦争を終わらせる気になったと感じた。
圧倒的な力の差に、諦めの感情が頭を過る。
もう終わりだ……
頭の中でそう呟いた瞬間、太陽のように眩しいその光の球が、凄いスピードでこちらに向かって来た。
もう逃げようなんて微塵も思わなかった。
こんな力の差を見せつけられて、立ち向かおうと思う人はどこにも居ないだろう。
絶望と焦燥感に蝕まれる私は、そのまま巨大な球が近付いてくるのを、ただただ見ていた。
そして、服から出ていたネックレスを強く握りしめ、両親とちゃんとあの時に話せなかった事、初めて好きになったディオンに、好きと言えなかった事をひどく悔やみ始めた。
今さら、悔やんでも遅いのに……
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