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裂かれた大地
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しおりを挟むでも、なぜか痛みをあまり感じなくて、不思議な気持ちで強くつむった目をゆっくり開けた。
すると、私を庇うようにして壁になったローレンが、この瞳いっぱいに映った。
「……えっ……」
信じられない光景に、目を疑った。
ぶつかったのは球ではなく――私を庇ったローレンだった。
そう気付いた瞬間から落下を始めるローレン。
「ローレン!!」
慌ててローレンに手を伸ばしたけど、一歩間に合わずに空気を掴む。
「ローレンーー!!」
追いかけるも、頭から地面に落ちていくローレンには、あと少しのところで手が届かない。
こんな事なら、早く飛べる練習でもしておけば良かった。そんな、今さらの後悔が胸をよぎる。
地面が近付いて来て、追いかけても間に合わないと判断した私は、すばやく手を地面に向け、逆風を起こすための魔法を放った。
その風におかげでローレンの落下速度は緩やかになって、ローレンはゆっくりと地面に着地をした。
その様子を確認してから、私もすぐにローレンの横に着地した。
「ローレン!!」
いくら呼んでも何の反応もない。
ローレンの口の端からは、血が伝っている。
信じられない……
まさか……死んだの!?そんなわけないよね!?
「ローレン!お願い!返事をして!」
手をかざして回復魔法をかけ始める。
「絶対死なせないから!!目を覚まして!!」
すると、「タチバナさん!ちゃんと壁を作って!そうじゃないと私たちや指揮官たちも……」と叫ぶ声が頭上から聞こえて来た。
そうだっ……
でも……
こんなローレンを置いて、戻れるわけが……
葛藤の中、私は頭上からの声を無視してローレンに回復魔法を続けた。
泣いても何も変わらないのに、涙が溢れてくる。
「私、生きて帰らないと、許さないって……言いましたよ……」
そして零れ落ちた涙は、血の付いたローレンのローブにシミを作っていく。
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