【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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裂かれた大地

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「ちょっ……アラン!近い!」
ドキッとして思わず慌てて身を引くと、アランは「シエルちゃんは恥ずかしがり屋やなぁ」と笑うから、「アランの距離感がおかしいんでしょ!」と私は口を膨らませた。

その時、ふと気付く。

「あれ?じゃあ布団代わりにかけてくれていたローブは、アランの物だよね?」
「ローブ……?ああ、せやで。あれは俺のやけど」

「じゃあ今着てるのは?」
「ん?これも俺のやけど……?」
「え?なんで?」
「なんでって?」

「もしかして、何着か持ってるの?」
そういえば、支給される1セット以外は有料で買えるのよね。
なんか、手も届かないほどに高かった記憶しかないけど。

「あれ?普通何着か持ってるもんちゃうん?汚れた時とか困るやん」
「えっ!?私、ずっと1着なんだけど」
「えっ?それ困らん?俺3着づつ持ってるんやけど」
「えっ!?3着も!?」

さすが、医者の家系なだけある。
アランは本当のお金持ちなんだ!

「それより、やっと髪が明るい色に戻ってきたな」
そう言われて自分の髪を掴んで見ると、完全に金髪に戻った自分の髪が映った。

「体はどう?」
その言葉に、自分の体に意識を向ける。
すると、驚くほど体が軽くなっていることに気付いた。

「うん。かなり良くなったみたい」
凄い……

回復のスピードに驚いていたその時、私のお腹がぐうっと鳴り、テント内に響いてしまった。
すると、アランが顔をクシャっとさせて笑う。

「おっきー音やな。ご飯まだやったもんな。給仕場に残ってたやつは、さっき全部ぶちまけてしもうたから、隣のテントとかに残ってないか見てくるわ」
「いいよ。私が自分で行く」
「ええから。あんなんあったところやし、シエルちゃんはここで休んどき」

「う……うん。ありがとう」
アランは優しいな……


アランが出て行って、突然静まり返るテント内。
一人残された私は、先ほどあった出来事を思い出してしまう――



――約1時間ほど前、私が襲われそうになったところを目撃したアランは、迷うことなく主犯格を殴り飛ばした。

直後、主犯格は突然もがき苦しみ始め、私たちがうろたえている間に、指揮官がテントに入ってきた。

指揮官は主犯格を一目見るなり、主犯格の首に手をかざして解除魔法をこころみた。でも、全く効果がなかった。

回復魔法も何故か跳ね返され、手の施しようがないまま、犯人は瞬く間に瀕死ひんしの状態におちいっていった。
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