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裂かれた大地
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その勢いで相手は後ろに吹き飛び、ベッドが次々と奥にズレて行く。
怒りで体が震える。
自分の欲望を満たす為だけに、なんの罪もないシエルちゃんを犠牲にしようとしていたなんて……
こんなもん、いくら殴っても許されへん!
シエルちゃんの心の痛みはこんなもんちゃう!!
「……アホ過ぎる。そんな事も分からへんなんて!こんな奴に……こんな奴にシエルちゃんの心が傷付けられた事も、本当にムカついてたまらんわ!!」
涙が滲む中、倒れているそいつの胸倉を掴み上げようとすると、友人に両腕を掴まれ、再び引き離される。
「もう止めた方がいい!もうすぐ看護師が返ってくる!」
「離せ!そんなんどうでもええわ!」
「アランまで塔入りになるだけじゃなく、タチバナさんの事だってバレるぞ!」
その言葉に、一瞬我に返る。
その時、俺の魔力察知能力が勝手に発動し、保健室の看護師の魔力が近づいてくるのがわかった。
看護師に何を思われようが、説教を受けようが、そんなことはどうでもいい。
でも友人の心配そうな顔と、シエルちゃんに迷惑がかかる可能性を考えると、奥歯を噛みしめるしかなかった。
「ええか!!お前らはシエルちゃんに手を出してない!」
「えっ……?」
俺の言葉に、反省している3人は驚いた表情に変わった。
「お前らはただケンカをしただけだ。それで学園には通せ! 他のことは言うな!」
「どうして……。僕たちがした事、バラさないんですか?」
驚くのも無理はない。
もし真実が明るみに出たら、こいつらの罪は2重になって罰も重くなる。
やから、俺たちが黙っていることはこいつらにとって都合が良すぎる話。
「当たり前やろ。そんなんしたら、すぐに学園中に噂が広がる。そうなったら、シエルちゃんがどんだけ悲しむと思うねん!」
俺の言葉に、3人は静かに俯いた。
「今度こんな事をやったら、俺は絶対一生お前らを許さへんからな!!」
俺は……
この場に友人が居なかったら、冷静さを失い、こいつを殺していたかもしれん。
…………
……
そうだったんだ……
「ありがとう。あの部屋から助けてくれたの、アランだったんだね」
「いや、俺だけちゃう。あいつらもめっちゃ動いてくれていたし」
「じゃあ、何かお礼しないと……。もし戦場から戻れたら紹介してくれる?」
「ああ。って……戻れたらってなんやねん。戻れるに決まってるやろ」
「……そう……だよね。はは……」
今のところ、NIHONが押してるんだもんね。
そう分かっていても不安な私は、無理に笑ってみせた。
するとアランの手が伸びて来て、私のサイドの髪をそっとかきあげた。
「……もう、完全に大丈夫そうやな。一時期はどうなるかと思ったけど」
「あれが過呼吸なんだね……」
名前は聞いた事あったけど……
アランが的確な処置をしてくれなかったら、また意識が飛んでいたんだろう。
「シエルちゃんは色々抱え込み過ぎなんやろうな」
「そうなんかな……」
なんだかんだ言って、みんな色々と抱えている気がするけど。
「俺は……そんなシエルちゃんの力になりたいんやけど」
そう言いながら、アランはそのまま私の顔を掴んで、ぐっと引き寄せた。
怒りで体が震える。
自分の欲望を満たす為だけに、なんの罪もないシエルちゃんを犠牲にしようとしていたなんて……
こんなもん、いくら殴っても許されへん!
シエルちゃんの心の痛みはこんなもんちゃう!!
「……アホ過ぎる。そんな事も分からへんなんて!こんな奴に……こんな奴にシエルちゃんの心が傷付けられた事も、本当にムカついてたまらんわ!!」
涙が滲む中、倒れているそいつの胸倉を掴み上げようとすると、友人に両腕を掴まれ、再び引き離される。
「もう止めた方がいい!もうすぐ看護師が返ってくる!」
「離せ!そんなんどうでもええわ!」
「アランまで塔入りになるだけじゃなく、タチバナさんの事だってバレるぞ!」
その言葉に、一瞬我に返る。
その時、俺の魔力察知能力が勝手に発動し、保健室の看護師の魔力が近づいてくるのがわかった。
看護師に何を思われようが、説教を受けようが、そんなことはどうでもいい。
でも友人の心配そうな顔と、シエルちゃんに迷惑がかかる可能性を考えると、奥歯を噛みしめるしかなかった。
「ええか!!お前らはシエルちゃんに手を出してない!」
「えっ……?」
俺の言葉に、反省している3人は驚いた表情に変わった。
「お前らはただケンカをしただけだ。それで学園には通せ! 他のことは言うな!」
「どうして……。僕たちがした事、バラさないんですか?」
驚くのも無理はない。
もし真実が明るみに出たら、こいつらの罪は2重になって罰も重くなる。
やから、俺たちが黙っていることはこいつらにとって都合が良すぎる話。
「当たり前やろ。そんなんしたら、すぐに学園中に噂が広がる。そうなったら、シエルちゃんがどんだけ悲しむと思うねん!」
俺の言葉に、3人は静かに俯いた。
「今度こんな事をやったら、俺は絶対一生お前らを許さへんからな!!」
俺は……
この場に友人が居なかったら、冷静さを失い、こいつを殺していたかもしれん。
…………
……
そうだったんだ……
「ありがとう。あの部屋から助けてくれたの、アランだったんだね」
「いや、俺だけちゃう。あいつらもめっちゃ動いてくれていたし」
「じゃあ、何かお礼しないと……。もし戦場から戻れたら紹介してくれる?」
「ああ。って……戻れたらってなんやねん。戻れるに決まってるやろ」
「……そう……だよね。はは……」
今のところ、NIHONが押してるんだもんね。
そう分かっていても不安な私は、無理に笑ってみせた。
するとアランの手が伸びて来て、私のサイドの髪をそっとかきあげた。
「……もう、完全に大丈夫そうやな。一時期はどうなるかと思ったけど」
「あれが過呼吸なんだね……」
名前は聞いた事あったけど……
アランが的確な処置をしてくれなかったら、また意識が飛んでいたんだろう。
「シエルちゃんは色々抱え込み過ぎなんやろうな」
「そうなんかな……」
なんだかんだ言って、みんな色々と抱えている気がするけど。
「俺は……そんなシエルちゃんの力になりたいんやけど」
そう言いながら、アランはそのまま私の顔を掴んで、ぐっと引き寄せた。
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