【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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裂かれた大地

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…………

……

「どっからどう見ても、完全に女装やん!」
「あー、こんなのが誰かにバレたら死ねる!」
と友人は真っ赤になって顔を隠す。

「お前は普通に女に見えるから安心しぃ。ヤバいのは俺や!完全に巨女やん。こんな背ぇ高い女おるかいな!」
「だから言ったでしょ。大した変身は出来ないって」

恰好かっこうはちゃんと女子の制服に変わったし、顔も髪型も女っぽくなった。
なのに、なぜか身長はそのままという不完全な変身姿にツッコミしか出ない。


「でも、アランすごっく綺麗だよ」
「……は?何言うねん!」
褒められて何故なぜか照れてしまった俺は、少しでも身長が低く見えるようにとシエルちゃんをお姫様抱っこからおんぶに変えた。

「もうええわ。行くで。女子寮に」
「お、おう……」


最初はバレたらどうしようと緊張しまくりの俺らだったけど、最近怪我人がよく出ていたせいか、誰にも気にかけられずに女子寮までたどり着いた。
なんだかんだ言って、女装作戦は成功だったようだ。

女子寮に忍び込んで、友人が魔法で鍵を開けると、久しぶりのシエルちゃんの部屋が現れた。

「悪い。ここで待っててくれ」



「分かった」

入園したてのように物が最低限しかない部屋を見回してから、ベッドの上にそっとシエルちゃんを降ろす。
胸元には俺のローブがかかったまま。

「なぁ、服を直す魔法とかって無かったっけ」
俺は、入口側にいる2人に問いかけた。

「ありそうだけど、知らないな」
「俺も」

「……そうか」
こんな格好のまま、目を覚ましたらどう思んやろうか……

「アランが今着てる服を着せてたらいいんじゃない?一応これ女子用だし」
「えっ……」
それって、今シエルちゃんが着てる服を俺が脱がすって事やん。
いやいや、そんなん出来るわけないやん!
俺がどれほどシエルちゃんの事好きか……
いや、でもショック受けるシエルちゃんを想像すると……

うーん、と頭を悩ませていると、突然廊下とつぜんろうか側が騒がしくなった。


「え?マジでお前……」
「あっ……うわっ。どうしよう」
「もう1回掛け直せばいいだろ。早くっ」
「……なんで?かかんない」
「なんでって、こっちの台詞セリフだよ。全然出来てないじゃん。さっきやったみたいに……」
「やってるよ……でも……」

さっきから何騒いでるや。

「……おい、もう少し静かにしてくれへんか。バレたらヤバいんやか……ら…………」
そんな会話に廊下側を振り返ると、廊下で待機していた2人は完全に男の姿に戻っていて……

「は?なんでお前ら……」
「アラン!魔法が解けた!」
「へ?」
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