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裂かれた大地
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しおりを挟むでも、このまま放置すると死ぬ可能性もある。
医者の息子として、助かる命を見殺しになんて出来へん。
なにより、こいつらがまだ黒やと決まったわけちゃうんやし……
俺は奥歯を噛み締めながら、こんな姿のシエルちゃんを他の奴らに見られないよう、ローブを脱いでシエルちゃんの胸元にそっとかけた。
「え?どうしたんだ、これ……」
「喧嘩か?」
「管理事務員呼んでくる?」
そんな会話に、ベッドから降りてドア側に向かった。
俺の目に、運良く同じ階の仲の良い奴ばかりが映った。
「えっ、アラン!?」
「まさかこれ、アランがやったのか!?」
皆、目を丸くして俺を見る。
まだ迷いは拭い去れない中、俺は眉をひそめて口を開けた。
「頼む、手伝ってくれ」
俺はこう言うしかなかった。
こうしな、俺はこいつらを殺してしまいそうやから……
色々考えた結果、俺は、シエルちゃんがこの場にいたことは秘密にしてもらう事にした。
こんな事が学園中で知られたら、あまりにもかわいそうだと思ったからだ。
幸い、俺の意見に全員が一致して賛同してくれた。
すぐに倒れていた男たちを保健室まで運び込み、その後は人があまり出歩かない夕飯時間を待って女子寮に向かう事にしたが……
「待ってや……」
シエルちゃんを抱きあげた瞬間に思った。
「ん?」
「今さらなんやけど、人通りの少ない壁際の道で行くにしても、こんな状態を誰かに見られたら、俺ら一巻の終わりちゃうか?」
シエルちゃんはずっと目を閉じている。
ご飯時間に、寝ている女の子を女子寮に運んでいる様子なんて、一瞬目にしただけでも怪しい以外何者でも無い。
「そうだな。完全に終わりだな」
「じゃあシーツでもかければいいんじゃない?」
と保健室から帰って来た友人はこの部屋にあったシーツをシエルちゃんにかぶせる。
「なんか余計怪しいし目立つわ!」
と、すぐにシーツを取っ払う俺。
「ってか、あいつら目覚めたか?」
「ううん。まだ。保健室の看護師は、ある程度回復したあとは暫く席外すって言ってたから、そのタイミングで叩き起こして何があったのか聞こう」
「……そうやな」
それにしても、どうしたもんやろう……。
見つからないようにする為にも、俺一人やと無理や。
でも……野郎数名と、気を失ってる絶世の美少女シエルちゃん。
しかも衣類の状態も思わしくない。
こんな状態で見つかったら、その時点でほぼアウトや。
男子寮から女子寮はある程度の距離がある。
完全に誰にも見つからずに到着するなんて事は、めっちゃ難しいはずや。
透過魔法や瞬間移動が使えたら一番楽そうやけど、そんなの使える生徒は学園内におらん。
浮遊魔法を使える人間はいるけど、シエルちゃんとサオトメしか知らん。
なら頼めるのは自然とサオトメになるんやろうけど……、こんなシエルちゃんをあいつが目にしたら…………絶対ヤバイ。
保健室が血まみれになる大惨事が一瞬で想像出来てしまう。
……なんかいい手はないもんか……
うーん、と唸りながら考えていると、ふとある方法を思いついた。
「あっ!せや!お前変身の魔法使えるようなったって言ってへんかったっけ?」
そう言って友人に顔を向けた。
「使えるようになったけど、大した変身は出来ないよ……ってまさか!」
友人のキョトンとした顔が、すぐに驚く顔に変わった。
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