【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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裂かれた大地

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「うっ……」
気持ち悪いっ。

胸の奥から込み上げてくる不快感に、慌てて口に手を当てる。

「大丈夫!?」
その言葉に答える余裕もなく、息を整えようとすると私に、メイがさらに問いかけて来た。

「講師呼んでこうか?それか治癒魔法かける?」

でも私はメイの言葉にブンブンと首を振った。


あの主犯格に、自分の存在を気付かれたくなかったから……。
騒ぐと、こちらに目が向くかもしれない。
そんな事を想像するだけで……身が凍り付きそうになる。


メイの温かい手が私の背中をさする。
すると少しずつ落ち着きを取り戻していくのが分かった。

「ありがとう……メイ……」

そう言うと、主犯格がいる方からまた大声が耳に飛び込んで来る。

「俺は怪我けが人だぞ!なのに戦場に連れて行くなんて頭沸いてんのかよ!!」
「うるさい!お前が喧嘩ケンカしたせいだろうが!帰還したら速攻で塔入りだからな!」
聞きたくもないのに、そんな会話が耳に入って来てしまう。

……えっ?……喧嘩ケンカ
昨日の事は喧嘩ケンカという事になってるの?


多分、私は男子たちを助けようとした時に意識を失ったんだと思う。
そして次に目を覚ました時は自分の部屋だった。

襲おうとした人達が、気遣うように私にローブを掛けて部屋に戻すなんて、あまりにも考えられない。


だから、ここに集まった時にローブを着てない男子生徒が居たら、その生徒が何かを知っている可能性が高いと思っていた。

なのに――今ここに居る生徒は全員ローブを着用している。

結局、私に掛けられていた男子用のローブも、一体誰の物か分からないし、あの後どうなったのか分からない。

喧嘩ケンカって、なんで?
まさか、私は関係ない事になっている?



気になる事はそれだけじゃない。他にもある。

それは、昨日あそこに居た男子たち全員の首に付いている首輪だ。

精神的に直視するのは辛くて、ハッキリとは見ないようにしたけど、あれは間違いなく魔法で作った物だった。
独自に作り出した、首を守るための魔法とかなんだろうか。


そんな事を考えていると、学園長の声がこのグランドに響いた。
「生徒諸君、おはよう」

その声に呼ばれるように、宙に浮く学園長を見上げる。
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