【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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私、死にたくない……

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そして、気付けば眩しい朝日が私を照らしていた。


耳に、いつもと変わらない小鳥のさえずりが入って来る。

なんか、凄く寒い……。
そう思いながら目を閉じて手探りで布団を探すが、どこにあるのかわからない。
ゆっくりと目を開けると……
私の視界に、いつもの自分の部屋が映った。


こんな光景は当たり前なのに、瞬時に何かを忘れているような不思議な感覚を覚えて、仰向あおむきのまま手の甲をまぶたに当てた。

「あれ……?なんだっけ……」

そう呟いて記憶を辿たどった瞬間、思い出される土色の男子たちと狂気にあふれたディオンの目に、バッと勢いよく起き上がった。
一瞬で心臓が嫌な音を立て始める。


えっ!?
あれ……待って!?
私、あの後、どうしたんだっけ……?


いくら思い出そうとしても全然思い出せないし、ここまで戻って来た記憶も見当たらない。

まさか、あれは悪い夢だった、とか……
と思いながら視線を落とす。

すると、すぐに男子生徒用の制服である青いふち取りのあるローブが、自分のひざの上に乗っているのが見えた。

私は何故かこのローブを布団の代わりにして寝ていたようだ。そら寒いはずだ。
でも、何がなんでここに男子用のローブが……


「あぁー、全然思い出せな……」
頭を抱えて部屋を見渡そうとして視界に入って来た光景に、一瞬で心が崩れ落ちた。

それは、紛れもなく、あれは夢でない事を証明していたから。


私の瞳には、シャツもタンクトップがビリビリに破られ、白いブラジャーがむき出しになっている自分の姿が姿見に映る。
その瞬間から、昨日の出来事が鮮明に脳裏にフラッシュバックする。


突然浅くなる呼吸にのどに手を当てた。


「はぁ……はぁ……」

息が……苦しい……
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