【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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私、死にたくない……

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驚いて顔を上げると、「大丈夫だよ」と、予想外に笑顔を見せるメイが居て頭の上にハテナマークを浮かべた。


「実は、もう好きじゃないの」
「え?」
「結構前に、偶然シエルとカミヅキ講師が屋上で一緒に居てる所を発見して……」

えぇ!?

「2人の様子を見てたら、なんか入る隙もなくて全然無理だなって思ったの。そしたらなんか冷めちゃった」
なんか怪しいと思っていたのよね。魔法会の時も2人で抜けるし、と続けた後に笑い飛ばしたメイは、どこか嘘を言ってるように見えた。

「……嘘?それって本当なの?」
と聞くと、メイは困ったように笑った。



「あ、バレた?私も人の事が言えないね。
でもね、確かに……完全に忘れたなんて言ったら嘘になると思うけど、それで大半諦めれたんだから、私にとって特別なんかじゃなかったんだよ。これは本当」
今度は嘘をついているように見えなかった。

「その人に代わる人なんていない、そんな特別な存在が本物だと私は思うの。諦めるなんてどうやっても出来ないような人をこれから見つけるから、シエルも協力してよね!」

「メイ……」
罪悪感とメイの優しさに涙が溢れ来る。

立ち上がったメイに抱き着かれて、目じりに溜まっていた涙がスッと頬に流れた。
私って、いつからこんなに泣き虫になったんだろうか。


身を引きはがしたメイは、とっても優しい声で言った。
「だから、私の事なんて気にせず頑張ってよね!気にして遠慮してたら容赦しないからね!」
「うん……」

「私たち、親友でしょ」
その言葉に胸が嬉しさで満たされた。



「うん!」
今度は、私の方からメイの背中に手を回して抱きしめた。


親友に後押しされる事って、こんなにも心強いんだね。
全然知らなかった。


メイにあきれられても、怒られても、更に関係が悪化しても仕方ないと思っていた。

それほどの内容だと思っていたのに、まさかメイに許され、さらには応援されるなんて……数時間前の私は想像出来ただろか。





次にディオンに会ったら……

今のこの気持ちを伝えたい。

戦地で私に何かがあっても、後悔しないように。



その日、私は何年ぶりかに規則を破ってメイの部屋でお泊りをした。

消灯後は声をひそめ、お互い昔の話や記憶の底に沈んでいた出来事の話をした。
そして、もうすぐ戦争に行かされるというのに、お互いに将来したい事の話を夜が明けるまで語り合った。




翌日――

私は大きな決意を胸に抱きながら、ディオンが会いに来てくれるのを待った。
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