【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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私、死にたくない……

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「前世の事は……ただ言いづらかったの……。ずっと、皆を……メイを騙してたみたいで……。言えない期間が長くなるほど、言いづらくなって……」

「そうだよね……。なのに言ってくれてありがとう」
と言うと、メイは私を抱きしめて来た。

「メイ……」
「ねぇ、シエル」
「なに?」
「……これを知ってるのはカミヅキ講師と私だけ?」
「えっ、うん」
なんでここでディオンの名前が……。

「そっか……」
つぶやくと、メイは嬉しそうに微笑んだ。


「その……ディオンの事なんだけど……。これだけは本当に隠してたとかじゃないの」
私の言葉に、不思議そうな顔が向く。



「あっ……でも、知らず知らずのうちに隠してたのかな……」
自問自答をして眉が寄る。

「なんの話?」
「本当は、メイにディオンの事を聞かれた時、好意の自覚はあったの。もしかして好きなのかも、位は思ってたと思う。でも、そんな感情、絶対に復讐の邪魔になるって分かってたから。だから認められなかった……」

「シエル……。そっか、ずっと卒業したらしたいって言ってたのは、さっき話してくれた復讐の事だったんだね」
と言われて静かにうなづく。

「でも、一緒に居れば居る程に、もう認めざるを得ないくらいに気持ちが溢れて来て……」
「うん」

「だから……今は、ちゃんとこの気持ちを認めてるの」
そう言って胸元に自分の手を置いた。

メイになんて思われるのか、不安になる。
せっかく、話も出来るようになったのに、また元に戻ってしまうかもしれない。

でも、私の事でこんなにも泣いてくれる親友に、もう隠し事はしたくないって思った。

だから……


「私は、ディオンが好き…………。メイが好きだって知っていたのに…………本当にごめん……」


メイが好きと知りながらも、2人で過ごした時間は数えきれないほど。
本当だったらメイの恋に協力するべきなのに、キスまでしてしまった……

私はメイには何を言われても、何をされても文句が言えない。それほどの事をしている。


そんな思いで頭を深く下げていた私の耳に、メイの笑い声が飛び込んで来た。
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