【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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私、死にたくない……

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…………

……

メイに続くように、メイの部屋に数歩足を踏み入れる。

バタンと扉を閉めてから、懐かしさを感じるメイの部屋を見回した。
半年ぶりに訪れるこの部屋は、相変わらず物や服であふれていた。

玄関右手にある低めの棚の上には、帽子やマフラー、コートが乱雑らんざつに積まれている。


メイは、バッグを投げるように机の上に置いてローブをベッドに脱ぎ捨てると、私に背を向けたまま立ち止まった。

何も言わない様子から見て、私が話を切り出すのを待っているんだろう。



「……ごめん……」
そう言うと、メイは勢いよく振り返り、怒りの目でこちらをにらみつけて来た。


「何!?まさか、また謝るだけ!?」
「違っ……」
「謝るだけなら今すぐ出てって!」
メイは、私の背後にあるドアを勢いよく指さした。

「違う!今回は謝るだけじゃない!メイに伝えたくて……だからそこでずっと待ってたの!メイ以外に聞かれたら……絶対に困る話だからっ!」

私の言葉に、メイは目を大きくした。

「実は、私……」


私はメイに、前世やネックレスの話をした。
メイは、私の話を聞いているうちに、怒りを含んだ表情が次第に和らいでいくのが見て取れた。


「……という事なの」

「……そう、なんだ……」

ベッドに腰掛け、困惑の表情を浮かべるメイは、前に立つ私から視線を落として深いため息をついた。


「そんな凄い事情があったって全然知らなかった……。なのに勝手に落ち込んで、一方的責めてごめん……」
悲し気に眉が下がったメイの顔を見て、私も釣られて下がってしまう。

「ううん。謝るのは私の方だよ。メイにずっと辛い思いをさせてて、ごめん……」
「ずっと……私が頼りないから、私が信用できないから隠してるんだと思ってた……」
その言葉に驚いてしまう。

「え?頼りないなんて、絶対無いよ!メイの事は凄く頼りにしてるし!」
「……そうなの?」

「うん!そうだよ!
試験に受からない原因を必死になって一緒に考えてくれたり、私がミジンコ魔力だって馬鹿にされた時も何度も盾になって助けてくれたり、他にもあげたらキリがない位にメイには色々してもらってる。そんなの、頼りありすぎだよ!」
と言うと、メイはジワりと涙を浮かばせて笑った。

「シエルは、それ以上に私に色々してくれているけどね」

「え?そう……だっけ?」
思い返そうとしても、あまり思い出せない。
「そうよ。私の悪口を言った人をコテンパンにしたり」


「ああ……」
確かにそんな事があったような、とメイの言葉に思い出される古い記憶。


「とにかく……メイを信用できないなんて、絶対ないよ!
ネックレスの事を言えなかったのは、闇魔法の事を話してしまうとメイの負担になるんじゃないかって思ったからなの」
またあふれて来る涙を指で拭うメイは、何度もうなづいた。
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