【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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私、死にたくない……

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出来るだけ後悔は残さない。
ついに出陣まで残り3日となった私は、強い決意を胸に、メイの部屋の前でメイの帰宅を待っていた。

メイの部屋は4階で、階段のすぐ横の部屋だ。

階段を上がって来る足音が聞こえるたびに胸をドキドキとさせた。
近付いてくる足音に緊張しては、メイではない姿にホッとするような、でも残念なような気持ちになる。

そんな事を何十回と繰り返して無駄に疲れを感じて来た頃、再び階段を上がる足音が私の耳に入って来た。
今回もメイじゃないんだろう、と思った時、とても聞き覚えのある声が聞こえた。


メイだ……
そう分かった時、私の瞳にちょうど階段を登り切ったメイの姿が映った。


「メイ……」

メイは友人と帰宅してきたようで、私の声が届くと、笑顔のまま隣を歩く友人から私にゆっくりと視線を移した。
そして私と目が合った瞬間、笑みがすっと消えた。


そんな様子に凄く胸が痛んだけど、勇気を絞り出すように切り出す。
「メイ。話があるんだけど……」

メイから明らかに冷たい目を向けられ、眉が寄ってしまう。
「前に、もう何も聞かないって言ったよね?」


メイとは絶交された後、一度だけ話をしている。
でも途中で、やっぱりメイには言ってはいけない話のような気がして来て、結局謝る事しか出来なかった。

「メイ!お願い、聞いて!」
「聞かないって言ってるじゃん!しつこい!」

その後からは、全部こんな感じで跳ね返されて、まともな話すらさせてもらえなくなってしまった。

「メイ……」
「どうせまた謝るだけなんでしょ?もう、そんなの要らないから!」
と言うと、友人の方を向いた。

「ネリーシャ、私やっぱり帰らない。また明日ね」
「う、うん……」
心配そうな友人に手の平を見せたメイは、クルっきびすを返した。
私は慌ててそんなメイに駆け寄って、ぐっと腕を掴む。

「待って!」
「離して!」
「全部言うからお願い!メイに聞いて欲しいの!」

私に背を向けていたメイは、私の言葉を聞いた瞬間、ピタリと足を止めた。


「……本当に?」

低い声で背中越しにそう言って来るメイは、ゆっくりと振り返って私の心を探るような目で見て来た。

「……うん」
向けて来たメイの目の奥には、深い葛藤かっとうがにじみ出ている気がした。
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