【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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私、死にたくない……

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ディオンはそう呟くと、私に影を落とし、再び綺麗な顔が私の視界を埋めてきた。

「えっ、ちょ……」
咄嗟とっさに手で口を押さえる。
「な、何っ……!?」
「足りねぇんだろ?じゃあ、お前が足りると思うまでもらう」

口元を隠していた手をすくうように取られたと思うと、ポイっと摘まみ落とされてしまう。
「邪魔だ」
「あっ……」


重力と共に落ちた自分の手を見届けた時、視界の端に近付くディオンが映った。
それに気付いて慌てて後ずさろうとすると、すぐに展望台の柱に背中に背が当たった。もう後ろはない。

「待っ……心の準備が……」


じりじりと迫って来るディオンは、もう1歩も逃がさないというかのように、私の耳の横に手を突いて私を挟み込んだ。

「さっきしたばっかなのに、そんなのいらねぇだろ」
低い声で、私の耳にささやくように言う。


さっきの不意打ちと違って、間もなく来ると分かっているキスに、心臓がドドドと酷い音を立てる。

「む、無理……かも……」
「何が無理なんだよ。失礼な奴だな」
「違っ、そういう意味じゃなくて……」

迫りくるディオンに耐えれなくなって、ギュッと目をつむって顔を伏せると、「こっち向け」と呼ばれる。
すると、自然とあごが上を向いて、まぶたも上がっていく。


今のディオンの感じからして魔法なんて使ってないのに、まるで魔法にかかったかのようにディオンを見上げてしまった私は、一度からんだその視線から目が離せなくなった。

ディオンは私の顔を見ると、満足そうにフッと意地悪な笑みを浮かべた。

その一連の流れにドキっとすると、ディオンはすぐに私の視界を埋めていく。
息遣いが感じられるほど近くに顔を寄せてくるディオン。

私の心臓は、爆発するんじゃないかと心配になる程に早鐘を打っている。

「ディ……」

視線が交錯こうさすると、時間が止まったかのように感じた。

「……オン……」
ディオンの名前を呼んだ瞬間、ディオンは微笑ほほえみながら、そっと唇を重ねてきた。

そして月が照らす2人の影が静かに重なった。
その瞬間、熱い感情が湧き上がるのを感じた。

「……んっ」

時折ときおり、熱い吐息といきが隙間から漏れて、そしてすぐにまた塞がれる。
唇がふやけてしまいそうな程、とても長い時間キスをしていたと思う。

「はぁ……」

強引なのに、ちゃんと私に合わせたような優しいキス。
この時間が、いつまでも永遠に続けばいいのにって、心の底から思った。

どんどん溢れて来る、好きという気持ち。



……好き……。

もう、どうしようも無いほど、ディオンが好き……。
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