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私、死にたくない……
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一体何なのかと思って見ていると、それを私の肩にそっとかけてきた。
じわりと温かさが伝わってくる。
ディオンが出したものはふわふわのポンチョだと分かって、「えっ、これ……」と驚きの声を漏らした。
「馬鹿かよ。何月だと思ってんだ」
「あ、ありがとう……」
やっぱり優しい……。嬉しい。
「ってか、髪、結構戻って来たな」
そう言うと私の髪を手に取った。
「うん……」
やっとこれで半分くらい金色という所だろうか。毎日実技尽くしじゃなければ、もうとっくに全回復していたに違いない。
思っていたより魔力の回復って早いようだ。
「また寝れねぇのか?今日もひでぇ顔だな」
と言われても、今は何も言い返す気が起きない。
「授業は実技ばっかなんだろ?そんなので大丈夫かよ」
全然大丈夫なんかじゃない。
両親のショックや、戦争に駆り出されるという悲劇が私の精神を蝕んでいて、寝ようとしても全然寝れない。
食べるのも億劫で、頑張ってもほとんどお腹に入らない。
なのに私のチームだけ、1番最前線に送られることになってしまった。もう最悪としか言いようがない。
私はやっぱり、そういう不運の星の下に生まれたんだろう。
地上では魔法の使えない自衛隊と、飛べない魔法自衛隊、そして飛べない生徒が戦う。
そして上空では、飛べる魔法自衛隊と空を飛べる生徒が戦う。
チーム分けの時に飛べる事を知られてしまい、上空を守るチームに任命されてしまった。ちなみにローレンと同じチームだ。
Aクラスから浮遊魔法を習うらしいけど、実際に飛べるのはほんの数名しか居ないのが普通で、Sクラスでも同じらしい。
だから、うちのチームは私とローレンを合わせてたった5人しかいない。
空を飛べる魔法使いは数少ない。それは生徒に限った事じゃない。
人数が少なすぎるせいで、学園生徒は、ほぼサポートのような役目を担うはずなのに、飛べる生徒だけは特別に最前線の配置となった。
こんな状況に、今世まで付きまとっている不運を心底恨んでしまう。
私はきっと、今世もこの不運に殺されるのかもしれない。
『死』が怖いはずなのに、あの両親の姿を見た時から心が分離しているようで、あまり怖さを感じない。
不安や悲しみも、心の痛みも麻痺してるみたいだ。
自分の事なのに、まるで他人事みたい。
なのに完璧には他人になりきれなくて、時々ふと現実に戻って来ては、悲しみと絶望に落とされる。
そんな事を、ずっと繰り返している気がする。
ディオンは、
「また眠くなる魔法でも使ってやろうか?」
と言って頭に手を伸ばしてくるから、私は顔の前に手で壁を作った。
「……いい……。起きてたいし」
「んな、ひでぇクマなんて作ってまでしてこんな所に居てぇか?」
ディオンの言葉にグっと眉がよる。
「こうやって……空を見上げるのも、あと少ししか出来ないかもしれないし……」
「あー、やっぱそういう事か」
ディオンは大きなため息をつくと口を開けた。
「お前、俺の事信じてなかったんだな」
「えっ……」
「どうりで毎日、沁み垂れた顔ばっかしてるわけだ。どうにかしてやるって言っただろ」
「言ったけど……。でも、まだいい方法は見つかってないんでしょ?前に言ってたじゃん」
「確かに見つかってはねぇけど……」
大魔法使いであるディオンが、数日かかっても見つけれない答えを、あと4日で見つけれるわけがない。
なのに……
「俺を信じろ。お前は死なねぇ」
そんな事言われると、ちょっと期待してしまう。
じわりと温かさが伝わってくる。
ディオンが出したものはふわふわのポンチョだと分かって、「えっ、これ……」と驚きの声を漏らした。
「馬鹿かよ。何月だと思ってんだ」
「あ、ありがとう……」
やっぱり優しい……。嬉しい。
「ってか、髪、結構戻って来たな」
そう言うと私の髪を手に取った。
「うん……」
やっとこれで半分くらい金色という所だろうか。毎日実技尽くしじゃなければ、もうとっくに全回復していたに違いない。
思っていたより魔力の回復って早いようだ。
「また寝れねぇのか?今日もひでぇ顔だな」
と言われても、今は何も言い返す気が起きない。
「授業は実技ばっかなんだろ?そんなので大丈夫かよ」
全然大丈夫なんかじゃない。
両親のショックや、戦争に駆り出されるという悲劇が私の精神を蝕んでいて、寝ようとしても全然寝れない。
食べるのも億劫で、頑張ってもほとんどお腹に入らない。
なのに私のチームだけ、1番最前線に送られることになってしまった。もう最悪としか言いようがない。
私はやっぱり、そういう不運の星の下に生まれたんだろう。
地上では魔法の使えない自衛隊と、飛べない魔法自衛隊、そして飛べない生徒が戦う。
そして上空では、飛べる魔法自衛隊と空を飛べる生徒が戦う。
チーム分けの時に飛べる事を知られてしまい、上空を守るチームに任命されてしまった。ちなみにローレンと同じチームだ。
Aクラスから浮遊魔法を習うらしいけど、実際に飛べるのはほんの数名しか居ないのが普通で、Sクラスでも同じらしい。
だから、うちのチームは私とローレンを合わせてたった5人しかいない。
空を飛べる魔法使いは数少ない。それは生徒に限った事じゃない。
人数が少なすぎるせいで、学園生徒は、ほぼサポートのような役目を担うはずなのに、飛べる生徒だけは特別に最前線の配置となった。
こんな状況に、今世まで付きまとっている不運を心底恨んでしまう。
私はきっと、今世もこの不運に殺されるのかもしれない。
『死』が怖いはずなのに、あの両親の姿を見た時から心が分離しているようで、あまり怖さを感じない。
不安や悲しみも、心の痛みも麻痺してるみたいだ。
自分の事なのに、まるで他人事みたい。
なのに完璧には他人になりきれなくて、時々ふと現実に戻って来ては、悲しみと絶望に落とされる。
そんな事を、ずっと繰り返している気がする。
ディオンは、
「また眠くなる魔法でも使ってやろうか?」
と言って頭に手を伸ばしてくるから、私は顔の前に手で壁を作った。
「……いい……。起きてたいし」
「んな、ひでぇクマなんて作ってまでしてこんな所に居てぇか?」
ディオンの言葉にグっと眉がよる。
「こうやって……空を見上げるのも、あと少ししか出来ないかもしれないし……」
「あー、やっぱそういう事か」
ディオンは大きなため息をつくと口を開けた。
「お前、俺の事信じてなかったんだな」
「えっ……」
「どうりで毎日、沁み垂れた顔ばっかしてるわけだ。どうにかしてやるって言っただろ」
「言ったけど……。でも、まだいい方法は見つかってないんでしょ?前に言ってたじゃん」
「確かに見つかってはねぇけど……」
大魔法使いであるディオンが、数日かかっても見つけれない答えを、あと4日で見つけれるわけがない。
なのに……
「俺を信じろ。お前は死なねぇ」
そんな事言われると、ちょっと期待してしまう。
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