【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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私、死にたくない……

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翌日の放課後――

私は今、まさかの両親に会うために、ディオンと空を飛んで向かっている最中だ。

あの後、すぐに行こうとするディオンをなんとか説得して、今日にしてもらったんだけど……
お陰で一睡も出来なかった。


「お前、さっきから思ってたけど……今日ひでぇ顔だな」
「う、うるさいわね!あんまり寝てないのよ。見ないでよ」


戦争参戦を言い渡された数時間後に、ずっと離れ離れになっていた最愛の両親に会う事が決まって……
そんな状況でぐっすりと寝れるほど私の精神は頑丈じゃないのよ!


「にしても面白いよな」
「何が?」
まさか私の顔が、なんて事はないでしょうね。

「あんな暗号みたいなのを送りつけて来るなんてさ。さすがお前の親だよな」
「さすがって……?」
どういう事だろう?


あの後、ディオンに両親からのあぶり出しのメッセージを見せた。

1つの手紙につき、1つの文字がふわりと浮かぶ。

それを届いた日付順に並べると……あるメッセージが現れる。


じ か ん が な い は や く に げ て


あぶり出しじゃないかと気付いたあの日、すぐにこのメッセージまでは辿たどり着いた。

でも、これより前の手紙は上手く文字が浮かび上がらず、時間がない事の理由が分からなかった。

どちらにしても、理由が分かったところで逃げられないこの状況に、色々と諦めるしかなく……ただただ時間だけが過ぎて行った。



そして昨日、参戦を命じられて、やっと両親が言いたかった事が分かった気がした。


両親は、きっと、こうなる事を懸念けねんしていたんだろう。
20年前に戦争があったところだし。

私をこの学園に入らせないために、出生届けも出さず、家中に魔力が漏れにくくなる板を貼って、魔力が出てしまったあとは魔力制御をするネックレスを付けさせたんだろう。

それもこれも、全部私を守るためだったんだって、今なら思える。



だから…………
全然嫌がらせなんかじゃなかった。


私は、本当に両親に愛されているんだ。
このネックレスは両親からの愛だったんだ。



その事が分かって、凄く嬉しい。

お父さん、お母さん……
会って話したい事は山のようにあるんだよ。
と、心の中で、握りしめたネックレスに話しかける。

「自分の両親なのに、ワクワクを通り越して凄く緊張しそう……」
「なんだそれ。あ、この辺だな」
と言うと、ディオンは急に降下こうかしていき、舗装ほそうもされていない細い砂利じゃり道に降り立った。

私も続いて降りると、ディオンは言った。
「ここだ」


その言葉に、ディオンの視線の先を見る。

「……ここ?」
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