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私、死にたくない……
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しおりを挟む「は?瞬間移動……?って、お前…………、ここから逃げる気だな?」
その言葉に、目を逸らして口を噤んだ。
この状況で否定したところで、誰が信じるだろうか。
「バレバレ過ぎんだろ、馬鹿か。ってか無理に決まってんだろ」
「無理じゃないもん!私は空だって飛べるし、今は無理でもちゃんと魔力が回復したら出来るわよ。きっと!それに、ディオンに教えてもらったなんて、口が裂けても言わないから大丈……」
「いや、そういう話じゃねぇよ。確かにお前の魔力が回復したら自分だけじゃなく、他の生徒も逃がす事は出来るだろうな」
あれ?思った以上に私の考えが筒抜けに……
「でも、その後が無理なんだよ」
「その後?って?」
「跡形が残るんだよ。魔力の」
あっ……、それって……
「体の周りにあるモヤみたいなものだよね?人によって大きさとか色が違うやつ」
手を使って魔力の形をジェスチャーして伝えると、目をパチクリとさせるディオン。
「お前……まさかそんなに見えてるのか?」
「う……うん?」
大きくなったディオンの目を見て、そんなに驚く事?と、こっちまで驚いてしまう。
「さっきの壁といい、お前、下手したら100年後くらいには俺と変わらないんじゃねぇか」
え!?大魔法使いのディオンと変わらない!?って100年後!?
「見えんなら分かるだろ?人によって魔力の種類が違うって」
そう言われて頷く。
「ある意味それは、そいつの住所みたいなものだ」
住所みたいなもの……確かに。
「だから、逃げた所で、捜索依頼されたらすぐに見つかってしまう。見える奴からすると、どっかに隠れてたとしても壁なんて関係なく察知出来てしまうからな」
……そ、そうか!ほんとだ!
「そしたら逃げた奴も無駄に塔に入れられて酷い目に合うだけだ。それに、そんな事で戦争から逃げる事は出来ねぇと俺は思う。なんだかんだで上の奴らも必死だからな」
全然駄目じゃん……。
長年企んでいた『瞬間移動で脱園大作戦』は、実行されることなく終了のお知らせが流れて来た。
というか、実行前にその情報を知れて良かった、と心底思った。
「じゃあ私、どうしたらいいの……?」
前世、あんなに何度も死にたいと思っていたのに、今は心底死にたくない。
友人たちも失いたくない。みんなに傷ついて欲しくない。
このまま両親にも会わずに死ぬなんて、やっぱり嫌だし、もっとディオン達と笑っていたい。
メイとも仲直りだってしたい。
復讐も、まだ始まってもいない。
こんなに沢山の願いがあるのに、もう、何一つ叶えれる気がしない。
「まだ……死にたくないよ……」
「おい、なに死ぬ気でいてんだよ」
「だって……」
と言うと、ディオンは長い指で再び溢れて来た涙を拭ってくる。
「俺がどうにかしてやる」
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