【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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私、死にたくない……

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えっ……。従士って……、使用人とか付き人的な事だよね。
なんでそんな事……。


「そんな事とも知らなかった俺は、しばらくの間のんきだった。そうこうしているうちに、奴は、世間では『大魔法使いをしたがえてる凄い王子』として有名になって行った」

「そんな……」

「奴がそれを上手く隠していたのもあるが、俺が他人とは関わらなかったせいで、そんな状況に気付くのがひどく遅れてしまった。
気付けば奴は結局王座争いに勝ち抜き、お得意の話術と俺という存在を使ってどんどん国を大きくしていった。
結局あいつは、俺をめ、俺の力を踏み台にしたんだ。
そいつの代の時じゃねぇが、結局あの国は世界一の大国たいこくになった。下の代の奴らには関係ないと分かってんのに、俺の事を踏みにじった上で成り上がった世界一という座に、今でも腹が立つ」

「……まさかそれって……」


「リヴァーヴァル帝国だ」


「そ……その後はどうしたの?」

「俺が真相を知った途端、奴は俺に手のひらを返したような態度を取って来た。知ってしまったのなら、もう用済みだと言って国から追い出そうとして来た」

「ひ、酷い……」
ディオンのお蔭なのに、騙したことを謝るわけでもなく、なんて酷い事を……。

「だから俺は、あいつにとって呪いみてぇな魔法を掛けてやった」
「え?それって、どんな……」
と聞くとフハっと笑って「なんだと思う?」と言って来た。

その顔はひどゆがんでいて、よっぽど悔しいんだと分かった。
悔しさ、悲しさが伝わってきて、私の胸を締め付ける。

「わ……からない……」


「……一生、嘘を付けなくなる魔法を使ってやったんだよ。俺に関する記憶を全部消した後でな」
その言葉に、声が出なくなった。

「あいつ、俺以外にも沢山の奴らを騙してたみてぇで、日を追うごとにどんどん人間関係が壊れて行ったよ。あれは本当に見ものだったなぁ。
しかも俺との関係の記憶を消したものだから、俺の話になった時、周りの奴らに頭がおかしくなったと奇妙な目で見られていたりもしてたっけな」
ディオンは笑ってはいたけど、その奥に悲しさが見えた。

きっと、本当の友人だと思っていたんだ。
なのに、裏切られて……

「初めっから俺を騙すつもりで近付いたんだってさ。そうじゃないとお前なんか相手にするわけないって言って来たんだぜ。その話を聞いた瞬間、マジで八つ裂きにしてやろうかと思ったけど、結果的に殺さずに地獄を見せてやって正解だった……って……」
ディオンは私を見て目を丸くした。

「お前、何泣いてんだよ」
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